社説(11/3):石油高騰 家計を圧迫/「悪い円安」警戒が必要だ

 本格的な需要期を目前にして、灯油価格の上昇が止まらない。この秋の価格改定ではマーガリンや小麦、冷凍食品などを中心に幅広い品目が値上がりしたばかり。働く人の賃金が上がらない中、家計への負担が重くなっている。

 みやぎ生協(仙台市)は1日から宅配灯油(18リットル)の暫定価格を180円引き上げ、1944円とした。昨年に比べて既に450円以上高い。

 原油の国際価格はなお高騰が続いており、12月にかけて再度の値上げを検討せざるを得ない見通しだという。

 ガソリンも東北6県平均で1リットル当たり166円を超える7年ぶりの高値。電気料金も12月分まで11カ月連続の引き上げが決まっている。

 新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う石油、原材料の高騰に、急激な円安が加わって日本経済を直撃している格好だ。

 今年初めは1ドル103~105円程度だった円相場は夏以降、110円を超え始め、9月下旬からは114円前後で推移している。

 政府・日銀には、足元の円相場が「悪い円安」に陥っていないかどうか、的確に見極めながら、新たに打ち出す経済対策を金融政策の正常化につなげる努力を求めたい。

 日銀は先月28日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和を引き続き維持することを決めた。欧米諸国が「コロナ後」を見据え、金融緩和の出口を探り始めたのとは極めて対照的だ。

 デフレ体質が染みついた日本と各国の金利差が広がっていく中、「分配」先行の経済対策で国債増発の圧力が高まれば、さらに円安が進み、家計や企業は物価上昇に苦しむことになりかねない。

 円安は輸入品の価格が上がり、家計には負担増となる半面、輸出企業の収益を押し上げるため、日本経済にとっては好ましいとされてきた。

 日銀の黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「『悪い円安』ではなく、日本経済にプラスであるのは確実だ」と強調。負担増となる家計などへの影響は認めつつも、企業収益を引き上げる効果が上回るとの認識を示した。

 だが、近年は海外生産の拡大で、円安になっても輸出量が増えにくくなっているとの指摘もあり、油断は禁物だ。特にコロナ禍を経て、家計が一段と冷え込んでいることには十分な注意が必要だろう。

 国税庁の民間給与実態統計調査によると、働く人の昨年の平均給与は前年比0・8%減の433万円だった。感染拡大が一段落したことで今後回復が期待される個人消費にも、力強さがみられるかどうかは不透明だ。

 灯油や食料品など生活必需品の値上げは、所得の低い層にとって、より重い負担となる。為替の安定は格差への対応でも重要だ。経済対策の実施に当たって、十分な目配りが求められる。

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