幼児施設への侵入相次ぐ 子どもの安全確保と地域交流、どう両立?

 登米市豊里町の認定こども園「豊里こども園」に男が刃物を持って侵入した事件は16日で発生から1週間となった。子どもが集う施設が標的になった衝撃は大きく、宮城県内の幼児施設に不審者対策を強化する動きが広がる。ただ、防犯を徹底すれば地域との交流が阻害されかねず、関係者は頭を悩ませる。

 「子どもを預かる者としてショック。同じ事が自分の園で起きたらと思うと怖い」。園児約270人が通う愛子幼稚園(仙台市青葉区)の庄子むつ子園長がつぶやく。

 園では不審者対策として以前から刺股を導入。入り口にはカメラ付きインターホンを備え、防犯カメラも1台設置する。年1回の定期訓練に加え、抜き打ちの訓練も行う。2019年には園独自の防犯マニュアルも作った。

 事件後、庄子園長は職員26人に「子どもだけでなく施設全体も見渡して不審点がないか確認して仕事してほしい」と指示。マニュアル見直しも検討するが「入念に準備した侵入者にはどう対応すればいいか」と不安は尽きない。

 子どものいる施設の不審者対策は01年の大阪教育大付属池田小の校内児童殺傷事件を契機に強化された。県によると、県内の保育所や幼稚園など約1300カ所の大半がマニュアルを作成し、侵入を想定した訓練も定期的に行う。20年12月時点で、仙台市を除く公立の幼稚園・認定こども園の防犯カメラの設置率は32・4%という。

 全国では類似事件が後を絶たない。06年、鹿児島市の保育所に当時20代の無職の男がナイフを持って侵入。17年には大分県宇佐市の認定こども園で30代の無職の男がナイフなどで職員や男児計3人にけがをさせた。

 池田小事件後に文部科学省による危機管理マニュアル策定に関わった学校安全教育研究所(埼玉)の矢崎良明代表は「多くの施設が侵入を想定した訓練を行うが、侵入後では手遅れになる可能性が高い。高いフェンスを設置し、侵入させない工夫が必要だ」と語る。

 不審者対策が進む一方で、対策が施設の閉鎖性を高めないかと懸念する声もある。

 仙台市の幼稚園関係者は「安全を考え柵を高くしたいが、閉鎖的な印象も持たれたくない」と打ち明ける。安全確保を徹底すれば、住民が善意で子どもに話し掛けるような機会も奪われかねない。施設にとって地域との交流が断たれるという新たな課題が残る。

 仙台白百合女子大人間学部の三浦主博教授(保育学)は「地域と連携して不審者対策を進める視点も忘れないでほしい。住民と情報共有してスムーズに子どもを守る態勢づくりが必要だ」と指摘する。

刺股を使い、不審者侵入を想定して訓練する職員=仙台市青葉区の愛子幼稚園

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る