気になる症状 すっきり診断(114)直腸がんと人工肛門/腹部に装具貼り便排出

イラスト・叶  悦子

◎総合外科 下部消化管グループ科長 大沼 忍 特命教授

 大腸は肛門に近い「直腸」とそれ以外の「結腸」からなり、大腸がんの約3割が直腸に発生する「直腸がん」です。直腸がん治療の原則は切除です。多くの早期がんは内視鏡などを用いた局所切除で治癒しますが、進行がんでは、腸管切除を伴う手術が必要になります。通常、切除後は腸管をつなぎ直し(再建)、手術前と同じように肛門から排便できる状態にします。

 しかし、がんが肛門のごく近くに存在する場合、がんを取り残さないため肛門も一緒に切除する必要があります。肛門を切除した場合、便の出口がなくなるため、おなかに人工的な排せつ口を作ります。この人工的な排せつ口を人工肛門(ストーマ)と言います。

 ストーマになると、便の出口がお尻からおなかに変わるだけでなく、ストーマには括約筋がないため排便を自分でコントロールできなくなります。このため、ストーマ用装具をおなかに貼って、便を受け止める必要があります。

■防臭防水効果も

 装具は、便をためる袋と皮膚に密着するシール状の板からなる使い捨ての製品です。この装具をストーマ周囲の皮膚に貼り便を受け止め、便がたまったらトイレで排出処理を行います。防臭・防水効果のある優れた装具が市販されており、臭いや便漏れが気になることはほとんどありません。また、装具を着けたまま入浴可能です。一般的な装具交換頻度は週に数回です。

 ストーマがあることで特に食事制限はなく、適度な運動や旅行も可能です。装具が合わず便漏れや皮膚に炎症などが生じ、日常生活に支障を来すような場合は、皮膚・排泄(はいせつ)ケア認定看護師(WOCナース)がサポートしてくれます。創傷(wound)、ストーマ(ostomy)、排便・尿の調節(continence)の英語の頭文字をとって「WOC(ウォック)」と言います。

 直腸がんで肛門を切除した場合、ストーマは生涯装着することになります。一方、直腸がん切除後、再建部の縫合不全の予防目的や、実際に縫合不全が生じた場合に、腸管の安静を保つ(便を通過させない)ため、再建部の上流に一時的ストーマを作ることがあります。再建部に問題がなくなれば一時的ストーマは通常は3~6カ月で閉鎖します。

■社会生活送れる

 直腸がんに限らず、さまざまな病気や事故により、ストーマを造設した人を「オストメイト」と言います。日本には20万人以上のオストメイトがおります。オストメイトはストーマ用装具を着けることによって、手術前と同じような社会生活を送ることが可能となっています。

 

河北新報のメルマガ登録はこちら
医療最前線

「健康講座」では、宮城県内各医師会の講演会や河北新報社「元気!健康!地域セミナー」での講座内容を採録し、最新の医療事情と病気予防対策を分かりやすく伝えていきます。リレーエッセー「医進伝心」もあります。

先頭に戻る