気になる症状 すっきり診断(109)コロナ禍に潜むフレイルの恐れ/心身の衰え早期対処を

イラスト・叶  悦子

◎加齢・老年病科長 武藤 達士 特命教授

 新型コロナウイルス感染症の流行が治まりません。高齢者は特に重症化しやすいことが明らかになっており、ワクチン接種も優先的に行われました。テレビや新聞では連日、外出自粛が叫ばれていますが、感染を恐れるあまり家に閉じこもっていると社会とのつながりが少なくなり、心身の健康に悪影響が生じる危険性が高まります。

■生活が不活発化

 普段、私たちは外出して友人と会ったり、運動や趣味などを通して交流したりしながら、心と身体に健康な日常機能を維持しています。しかし加齢により予備能力が低下した状態で生活が不活発になると、病気やストレスに対する回復力が弱くなり、心身の機能が次第に衰えてしまいます。これまで自立して生活できていた高齢者が、介護を必要とする段階に進んでしまう前兆とも言える状態です。

 こうした健康と要介護の中間の時期を、老年医学では「フレイル」と呼んでいます。英語の「Frailty」(虚弱)を簡略化した和製用語です。フレイルは、「身体」「心/認知」「社会/環境」といった多面的な因子から成り立っており、お互いに影響し合っています。これらのバランスが一つでも崩れてしまうと、「負の連鎖」による悪循環が起こり、体の回復力や抵抗力が低下して心身の機能だけでなく、生活にも支障が出てしまうのです。

 フレイルの有無を評価するには、糖尿病や認知症、骨粗しょう症などの加齢に伴う持病だけでなく、目の前の症状(老年症候群)や危険因子を見逃さないことが重要です。

 統一した診断基準はありませんが、老年医学では(1)体重減少(半年で2キロ以上)(2)筋力低下(利き手の握力が男性28キロ、女性18キロ未満)(3)ここ2週間続く疲労感(4)歩行速度の低下(秒速1メートル未満)(5)身体活動の低下(軽い運動を週1回もしていない)-という兆候中、3項目以上当てはまればフレイル、1~2項目はプレフレイル、該当なしなら健常と評価しています。日常的には、横断歩道を時間内に渡れなくなった、疲れ顔が多い、ペットボトルが開けにくいなど、簡単に気付くきっかけはたくさんあります。

■健康寿命延ばす

 コロナ禍は、高齢の方々がフレイルになりやすい状況が生活の中に多く潜んでおり、特に注意が必要です。フレイルは適切な対策により要介護状態に進まずに済む状態、すなわち健康寿命を延ばすことが十分に期待できる状態です。予防法は宮城県のホームページが参考になります。

 フレイルにならない、進ませないためにも、自分自身や周りの皆さんが早く見つけて対処することが大切です。「以前と違う、おかしい」と感じたらそのままにせず、かかりつけ医の先生や老年内科へご相談ください。

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