社説(12/27):「思いやり予算」の変質/米軍と自衛隊 一体化に懸念

 「同盟強靱(きょうじん)化」の掛け声の下で加速する自衛隊と米軍の連携強化が、軍事的な一体化につながっていく懸念がますます深まる。

 中国が急速に軍拡を進める中、抑止力向上を急ぐ狙いは理解できる。だが、政府、与党内で発言が相次ぐ台湾海峡有事については、米軍と自衛隊が実際にどこまで作戦行動を共にすべきか、国会での議論も深まっていない。

 在日米軍と自衛隊の役割分担の在り方を総点検する視点から丁寧な審議を求めたい。

 日米両政府が2022年度から5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を単年度当たり約2110億円とすることで合意した。21年度比で約100億円の増額だ。

 「思いやり予算」は本来、米側が負担すべき在日米軍の基地・施設の人件費や光熱水費を日本側が肩代わりするものだ。1978年、当時の金丸信防衛庁長官が法的根拠を問われ、「思いやりを持って対処する」と答えたことに由来し、その後、日本側の負担は増え続けている。

 今回の合意では、光熱水費などの負担割合を段階的に削減する一方、自衛隊と米軍の共同訓練の高度化や在日米軍基地の防衛力強化に重点を置いたという。

 具体的には「訓練資機材調達費」を新たに計上し、仮想空間で共同訓練を行うための最新システムを導入。人工知能(AI)がつくる仮想敵と戦闘訓練を行ったり、米本土で実際に行われる戦闘機飛行訓練に自衛隊員がシミュレーターを通じて参加したりできるようにする。

 米軍基地・施設の強化では老朽化への対応に加え、米軍機を空からの攻撃から守る設備や即応能力を高める格納庫の建設に充てる。

 思いやり予算の変質は、安全保障環境の変化の表れでもある。国内の米軍基地はベトナム戦争などで出撃基地となったことはあるものの、戦後ほぼ一貫して紛争地域から遠く離れた後方拠点だった。

 しかし、懸念される台湾有事は、沖縄県に集中する米軍基地が前線となる。戦域を抑制できなければ、攻撃にさらされる可能性がある。沖縄の人々の不安や基地負担軽減の訴えに、真摯(しんし)に向き合わなくてはならない。

 東北も決して無縁とは言えない。宮城県の王城寺原演習場(大和町、色麻町、大衡村)や八戸市などでは今月4~17日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のオスプレイも参加して、大がかりな日米共同訓練が行われた。

 自衛隊との連携強化は、中国との対立を深める米国にとって世界戦略上、不可欠になっている。東北などでの共同訓練も日米が相互運用性の高さを示し、中国などをけん制する狙いだった。

 思いやり予算の膨張と変質が、自衛隊のさらなる任務拡大の呼び水にならないか、注視する必要がありそうだ。

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