社説(1/9):国民の身体活動不足/課題に向き合い健康増進を

 国民の日常生活の身体活動(体を動かすことの総称)量は世界保健機関(WHO)の推奨基準に照らすと、約半数が不足している実態が笹川スポーツ財団(東京)の調査で判明した。新型コロナウイルスの流行で体を動かす機会は減っている。国や自治体、関係機関は国民の健康増進や体力づくりのための有効な戦略を打ち立てる必要がある。

 WHOの身体活動ガイドラインは、成人(18~64歳)の場合で「中強度の有酸素性の身体活動を少なくとも週に150~300分、または高強度の身体活動を75~150分行う」ことを推奨している。

 財団は「スポーツライフに関する調査」の一環で2020年夏、WHOが考案した「世界標準化身体活動質問票」(GPAQ)を用い、18歳以上の3000人を調べた。

 項目は仕事(家事や介護、学業を含む)、移動(通勤・通学、買い物を含む)、余暇(スポーツや運動を含む)の3領域と座位時間で構成される。体をいつ、どの程度動かしているかを把握し、諸外国と比較できるのが利点だ。

 先月公表された推奨基準の達成率は、全体で53・3%(男59・6%、女46・9%)。男性は18、19歳の72・2%をピークに、60代まで年代が上がるほど低下していた。女性は子育て世代の低さが顕著で、30代が37・9%、40代が41・8%にとどまった。

 3領域別に見ると、男女とも「仕事」に関わる身体活動量が多い。男性は高齢になるほどその割合が減り、70代以上は20代の約5分の1に落ち込む。女性は30代を中心に、「余暇」による身体活動の少なさが目立った。

 健康増進というと、余暇時間にどれだけ体を動かすかをイメージしがちだが、余暇を使った身体活動の割合は決して大きくない。さらに、幾つかの意外な傾向も現れているので紹介したい。

 身体活動量を体格指数(BMI)別で比べると肥満、標準、痩せ型の順で多い。都市規模別では東京都区部・20大都市、人口10万以上の市、人口10万未満の市の順になる。

 肥満の人ほど肉体に負荷がかかる仕事の後は体を動かさず、高カロリーの食材を摂取している可能性がある。大都市に住む人は移動に公共交通機関を用い、小規模の都市ほどマイカーによる「ドアツードア」の生活に陥る状況が読み取れる。

 長いほど死亡のリスクが高まるとされる座位時間は男性が5・7時間、女性が5・3時間だった。残念ながら、世界でもトップクラスに入る。

 利便性を追求するあまり、日常生活で得られる基礎体力を無意識のうちに逃していると言える。年代や性別、職種の違いを踏まえた支援策は必至で、スマートフォンやゲームに支配される娯楽時間の使い方にも注意がいる。見えてきた課題や解決のヒントを対策に生かさない手はない。

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