社説(1/13):裁判員年齢引き下げ/周知と環境整備が不十分だ

 裁判員に選ばれる年齢が4月、現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる。改正少年法の施行に伴うもので、早ければ来年1月以降に作成される「裁判員候補者名簿」に載り、高校生を含む18、19歳が刑事裁判に参加することになる。

 三権の一つである司法権の行使に携わることは、主体的・自律的に社会に関わっていく契機になり得る。多様性の観点からも、若者の感覚が裁判に反映されることは望ましいと言えよう。

 だが、対象年齢が引き下げられたことを、当の18、19歳をはじめ、どれだけの国民が知っているだろうか。2009年に始まった裁判員制度の転換点にもかかわらず、周知不足は否めない。法教育の充実をはじめとする環境整備も急務だ。

 裁判員は裁判員法に基づき、衆院選の選挙権を持つ人の中から選ばれる。選挙権の年齢は15年の改正公選法で「18歳以上」に引き下げられたが、裁判員の年齢に関しては、少年法が適用される18、19歳が人を裁くことに対して異論が出て、付則で20歳以上に据え置かれた。

 昨年5月、18、19歳の厳罰化を図った少年法改正の際に付則は削除され、裁判員年齢は引き下げられることになった。ところが、国会の審議は少年法に集中し、裁判員年齢の引き下げについて時間をかけて議論した形跡はない。

 法相が年齢の引き下げについて初めて公式に発言したのは昨年11月。それも簡単に事実関係を紹介した程度だった。最高裁は高校生を含む若者向けの広報パンフレットなどで周知を図るというが、ホームページではQ&A方式で簡単に説明しているだけだ。

 法教育も十分とは言えない。法務省は全国の高校で出前授業を行っているが、実施は各校の判断だ。高校3年生も裁判員の対象になるのであれば、中学や高校の段階で法律の役割や裁判の仕組みをはじめとする法教育をしっかりと行い、法律の問題を判断できる資質や能力を育む機会を増やすべきだろう。

 最高裁によると、20年の裁判員裁判の平均実審理期間は12・1日。裁判員法は学業を理由にした辞退を認めているため、受験や就職活動を控える高校3年生が辞退することはできる。だが、裁判に参加した場合、学校は欠席扱いになるのか。その間の授業は補習などでカバーできるのか。さらに、守秘義務や、殺人などの重大事件で証拠に接した際の心理的な負担も小さくない。それらのフォローをどうするのか。

 裁判員は市民の参加によって成り立つ制度だけに、国はなぜ引き下げが必要なのかについて国民の理解を得る必要がある。17日召集の通常国会では、諸課題について審議を尽くし、18、19歳が安心して裁判に参加できるようにしなければならない。

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