河北春秋(1/14):かつて「フランス映画社」という洋画の配給…

 かつて「フランス映画社」という洋画の配給会社があった。商業的な成功が見込まれないような作品ばかり輸入して紹介する映画ファンにはおなじみの会社だった。負債を抱えて8年前に惜しまれつつ歴史を閉じた▼配給会社と上映館。同社と車の両輪のような関係にあったのが東京・神田神保町の「岩波ホール」。7月29日で閉館するという。映画好きにとって聖地のような劇場だ。コロナ禍の経営難が原因だと聞けば、無念の思いが募る▼総支配人を務めた高野悦子さん。生前の著書で「開館時から『つぶれる』といううわさが耳に入ってきた。上映作品が終わるたびに、うわさされた」。当初はそんな状況ながら埋もれた名画を上映し続けてファンの心をつかんだ▼アジアなど欧米以外の映画、欧米の製作でも大手が取り上げない作品、何らかの理由で公開されなかった名画、日本映画の名作。ホールが掲げた上映の目標は、客が不入りでも映画を打ち切らない骨太な運営とともに、好意的に迎えられた▼東京から離れて住む人にも縁遠い映画館ではなかった。岩波で評判を得ると、地方でも上映されるようになったからだ。サタジット・レイ、ジャン・ルノワール、アンゲロプロス。胸を揺さぶる映画に出合えたのはこのホールのおかげだった。(2022・1・14)

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