タガメサイダー、コオロギペペロン…未来の食卓は多様で多彩 昆虫食に挑む(1)

蚕のサナギがのったトマトクリームパスタ(左)とタガメサイダー=東京都台東区の「TAKE―NOKO」

 大粒の蚕のさなぎがあしらわれたトマトクリームパスタ、黒光りする肉厚のタガメが浮かぶサイダー。かぐわしい香りを漂わせ、料理が次々運ばれる。

 東京・浅草に昨年10月、リニューアルオープンした昆虫食カフェ「TAKE-NOKO(たけのこ)」。蜂やタガメを味わえるドリンク、昆虫の粉末などを使ったパスタを用意する。

 コオロギがのったペペロンチーノを注文した会社員佐藤修次さん(40)=千葉県松戸市=は「アーモンド風味のコオロギが味付けにマッチしている」と称賛。娘の愛莉ちゃん(5)も興味津々だ。

 運営するのは2014年創業の昆虫食品製造販売「TAKEO(タケオ)」(東京)だ。宮城県気仙沼市出身の斎藤健生社長(36)は「昆虫は食品として認知してもらえるようになった。食材としての可能性を広める段階に来ている」と見据える。

 売り上げの大半を、昆虫飲料や食品のインターネット販売、小売店への卸売りが占める。今年は飲食店へ販路を拡大し、調理しやすいボイル済みの冷凍コオロギなどを提供する。

 カフェでは飲食店や家庭でできる昆虫料理を提案する。「未来の食卓を疑似体験してほしい」と斎藤社長。10年後には野菜や肉のように、昆虫が生鮮食品売り場に並び、一般家庭に普及するビジョンを描く。

タガメサイダーをはじめ、山形・福島産コオロギ、昆虫ふりかけといった多彩な商品が並ぶ=「TAKE―NOKO」

手軽な自販機、さらに増設へ

 昆虫食ビジネスは今や、多様な形態、手法で地方にも進出している。仙台市青葉区のイービーンズ前に昨年12月登場したのは、昆虫食の自動販売機。コオロギやオケラ、バンブーワームの素揚げなど計9種類(各1000円)をそろえる。

 自販機運営会社アシード(広島県)が九州に設置したところ、ネットで注目され全国に拡大した。仙台営業所(仙台市若林区)の中山浩一所長(51)は「今は物珍しさから買う人が多い。ジュースと同じ感覚で手に取ってほしい」と語り、市内や近郊への増設を予定する。

 発電事業の太陽グリーンエナジー(埼玉県)は、二本松市のグループ会社で、コオロギを養殖。飼育を効率化し、本年度はほぼ倍増となる年間4・4トンの生産能力を実現。売り上げは前年度3倍の約1000万円を見込む。一方、割高感は払拭(ふっしょく)しきれず、コスト圧縮が課題だ。

 新たなタンパク源として注目される昆虫食。荒神文彦社長(48)は「(植物性食材を使う)代替肉は、原料の大豆のほとんどが輸入。(動物の)細胞の培養肉は、安全性や倫理性に疑問の声もある。自然由来の昆虫食は、日本人に好まれるのでは」と、需要増を期待する。

コオロギやゲンゴロウを取りそろえた昆虫食自販機。売り上げは一般的な飲料自販機と並び、上々だ=仙台市青葉区のイービーンズ前

 国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、近年、ビジネスや研究開発が加速する昆虫食。東北には以前から、虫の食用利用に情熱を燃やしてきた人たちがいる。現場を訪ね、昆虫食の未来像を考えた。
(生活文化部・浅井哲朗、江川史織)=5回続き

[メモ]国連食糧農業機関(FAO)は2013年に発表した論文で、昆虫食を世界的な人口増加による食糧危機と環境問題に対応する手段として推奨。昆虫はタンパク質含有量が多く、家畜に比べて温室効果ガスの排出量が少ないため、環境に優しいとされる。

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