6月4日は「虫の日」 昆虫食、じわり人気 東北ご当地商品も登場

 コオロギはエビの食感、タガメは青リンゴの香り-。見た目からは想像のつかない味わいや栄養価の高さから、昆虫食が人気だ。昆虫の養殖や商品開発に乗り出す企業も増えている。6月4日の「虫の日」を前に、東北の昆虫食の現場を歩いた。
(生活文化部・浅井哲朗、江川史織)

昆虫食売り場に立つ蜂谷さん=28日午後2時10分ごろ、仙台市青葉区の「ザ・スタディールーム」

リピーター確保

 芋虫を丸ごと閉じ込めたキャンディー、乾燥タランチュラのスナック。仙台市青葉区の雑貨店「ザ・スタディールーム」。約10種類の商品が並ぶバラエティー豊かな昆虫食売り場は、今や売りの一つだ。

 「プレゼントやイベントで食体験を楽しもうと、購入者は増えている」と蜂谷知洋店長。取り扱いを始めた2017年当時を振り返り、「虫を食べる発想は衝撃的に思えたが、食べてみると味わい深い。売れる確信はあった」と話す。

 同区のバー「レボル」でも17年、メーンとする爬虫(はちゅう)類料理に加え、セミやコオロギの素揚げをラインアップ。「好奇心から来店し、今ではすっかり虫目当てのお客もいる」(庄司翔社長)

 どちらの店でも、若い年代を中心にリピーターが付いているという。

素材の良さが大事

 昆虫食を巡っては20年、生活雑貨ブランド「無印良品」を展開する良品計画がコオロギの粉末を配合したせんべいを発売し、話題になった。こうしたブームの先駆けとなったのが、14年に国内初の昆虫食専門店をインターネット上に開設したベンチャー「TAKEO(タケオ)」(東京)だ。

 東南アジアを中心とした外国産や国産の昆虫を原料に、70種類もの商品を展開する。「フルーティー」と称される水生昆虫のタガメのエキスを注入したサイダーをヒットさせ、右肩上がりの成長を続けている。

 創業した斎藤健生社長は気仙沼市出身。高校卒業後、上京して料理人として働いた後、昆虫食ビジネスを志して独立に踏み切った。

 コオロギ、ハチの子(スズメバチの幼虫)、ゲンゴロウ…。「昆虫は三陸の海産物のように、素材の良さをアピールできる食材」。虫の姿を残して提供することを第一に考えた。これが消費者の隠れた需要をつかんだ。

 着実に取引先を増やすと、18年にはカフェを併設した販売店を都内にオープン。斎藤社長は「肉や野菜と同じ生鮮食品として店に並び、日常の食卓に上ることが目標」と意気込む。

 同社の技術責任者、三橋亮太さんは「地域の特色を基にしたストーリーを持つ、国産昆虫のブランド化に注力している」と説明する。福島名物ソースカツ丼にちなんだ「福島・ソース味二本松こおろぎ」など、6種類を商品化した。

タケオが展開する昆虫食商品。煮干しやクッキーなど多彩な商品がある
約4センチのタガメとレモングラス入りのドリンクを手にする斎藤社長=東京都台東区のタケオ直営店

飼育棟を新設

 原料を供給する「太陽グリーンエナジー」(埼玉県)は17年、二本松市内のグループ企業の敷地に約100平方メートルのコオロギ飼育棟を新設し、養殖に乗り出した。家庭用の衣装ケース約120箱を使い、社員3、4人が週齢別に飼育する。ふ化から30~45日後、二酸化炭素で窒息させて水洗いし、乾燥、冷凍処理を施す。年間出荷量は1トンにも及ぶ。

 タケオや都内の飲食店に提供するほか、大手を含む食品関連企業からサンプルの注文も相次ぐ。荒神文彦社長は「需要増に供給が追いつかない」と明かす。

 昆虫食の小売価格はまだまだ割高感があり、関係者は「コストダウンが普及への大きな課題」と言う。荒神社長は「市場拡大が重要。生産の効率化を進め、商品価値を高める努力を続けたい」と話す。

太陽グリーンエナジーが育てるのは、主にフタホシコオロギ。衣装ケース1箱当たり約1000匹を飼育する。室温30度前後、湿度30~40%に保たれ、通年飼育が可能だ

もはや罰ゲームにあらず

 元来、日本には昆虫を食べる食文化が各地に根付いていた。食用昆虫の種類は50を超えるとされ、稲作と結び付いた「イナゴのつくだ煮」はその代表格。東北でも市販の加工品や家庭の味として受け継がれてきたが、時代とともに食卓に上ることは少なくなった。

 食材として昆虫が見直されたきっかけは、国連食糧農業機関(FAO)による2013年の報告。世界人口90億人時代を見据え、家畜よりも生産効率の良いタンパク源として昆虫資源の増殖を提言した。

 「以来、日本でも社会の持続可能性に敏感な若い世代の関心を集め続け、おいしくないものを食べる『罰ゲーム』といった感覚は薄まっている」。「蟲(むし)ソムリエ」として活動するNPO法人「食用昆虫科学研究会」(東京)の佐伯真二郎理事長はこう指摘する。

 その上で「性急に大規模生産に走って環境負荷を高めたら意味はない。地域の伝統的な昆虫食文化と結び付いた、新たな価値の創造が望まれる」と話す。

 現在、国内市場の主流は雑食のコオロギだが、トノサマバッタはイネ科の草しか食べず、養殖しやすいという。食用利用を研究する弘前大の管原亮平助教(応用昆虫学)は「餌となる草の生産で、耕作放棄地も活用できる。未利用資源を生かすチャンスとなる」と社会的な意義を強調する。

メ モ 海外の研究では、最も普及しているコオロギのタンパク質の割合は乾燥状態で約50~60%、脂質が約20%で、栄養素のバランスが良いとされる。タンパク質の良質度を示すアミノ酸スコアは、カイコのさなぎやバッタで80~90あり、基準値の100に近い数値が出ている。

仙台市青葉区のバー「レボル」が提供する、外国産昆虫の素揚げ3種盛り(上段、1000円)。店では、数種類の昆虫から3種類選ぶことができる。左のセミは少々苦みの効いた野趣を感じさせる味。真ん中、タイワンオオコオロギはサクサクした食感で、川エビの唐揚げのよう。 驚いたのは右のバンブーワーム。見た目に最も抵抗を感じたが、こくと甘みが滋味深い味わいとなって口の中に広がる。最初は恐る恐る多めに付けた塩も要らなくなった。下段は伝統的な国産昆虫のつくだ煮(700円相当)。左からイナゴ、ザザムシ(カワゲラの幼虫)ハチの子(スズメバチの幼虫)カイコのさなぎ。甘じょっぱい風味で安心して食べられる<浅井記者>

タケオの看板商品「タガメサイダー」。口に含むと爽やかな青リンゴの香りが鼻に抜ける。甘過ぎず引き締まった味わいで、飲料として完成度が高く、一気に飲み干してしまった。使っているのはタガメのエキス。実物は入っていないのでご安心を=仙台市青葉区の「ザ・スタディールーム」<江川記者>

タケオが販売するタイ産タランチュラが1袋(税込み1980円)に1匹入っている。乾燥加工された体長約4センチの身を、プラスチックケースから取り出す。脚を1本ずつ口に入れ、毛のざらつきを感じながらかみしめると、エビに似た香ばしさを感じた。腹部はなぜかしょっぱい。胸は固く、頭の先にある長さ5ミリほどの2本の牙は歯応えが強い。全体を一気にムシャムシャ食べるのが正しい食べ方かも。だが、値段が値段なだけに、「丁寧に味わわないと」と思ってしまう<浅井記者>

黒光りした体が存在感を放つ「福島・ソース味二本松こおろぎ」(左)は、香りの強いソースとコオロギのうま味がマッチして、食べ応え十分。濃いめの味付けでおつまみの他、チャーハンの具材にも使えそうだ。京野菜を餌に育った「昆虫煮干し京都こおろぎ」は、昆布だしのような優しい味わい。体長1・5センチ程度と小ぶりだが、羽の模様や足の形がきれいに残っていて、観賞性にも優れている<江川記者>

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