秋田洋上風力、低い売電価格が波紋 還元減る? 漁業者ら不安視

国の促進区域指定に向けた「男鹿市・潟上市・秋田市沖」法定協議会=1月25日、秋田市

 秋田県沖で進む洋上風力発電事業を巡り、国の促進区域の事業者が公募で示した売電価格の低さが波紋を広げている。予想をはるかに下回る価格に競合他社は驚き、選に漏れた会社の株価が急落する事態も生じた。低価格化は消費者にメリットがあるが、売電収入を地域に還元することを条件に発電事業を容認した地元漁業者らは不安も募らせている。(秋田総局・馬場崇)

株価半値以下に

 昨年12月24日午後。洋上風力発電の関係者に衝撃が走った。国が入札公募した県内の促進区域「能代市・三種町・男鹿市沖」「由利本荘市沖」の事業者選定で、三菱商事(東京)グループを中核とする共同事業体が独占したのだ。

 決定打は入札評価点(240点満点)の半分を占める売電単価だった。能代市・三種町・男鹿市沖で1キロワット時当たり13・26円、由利本荘市沖で11・99円。国が設定した上限価格(29円)を大きく下回り、価格点で満点の120点を獲得した。

 他の事業者の価格点は50~90点台にとどまり、国は他事業者の単価を公表していないが、同グループとは約3~14円程度の差があったとされる。「コスト削減にも限度がある。あの価格では赤字だ」。他の事業者の関係者は舌を巻く。

 東北電力などとグループを組み、由利本荘市沖で早くから準備を進め、有望株とされた再生可能エネルギー開発のレノバ(東京)は落選後、株価が半値以下に下落。今年3月期の業績予想を51億円の最終黒字から11億円の赤字に修正を余儀なくされた。

欧州で参入実績

 落札した三菱商事グループは2012年、オランダ公営のエネルギー企業「エネコ」と提携を結び、洋上風力先進国のオランダやベルギー、英国で参入。海底送電で実績を重ね、20年にはエネコを買収した。

 三菱商事エナジーソリューションズ(東京)の岩城陽太郎風力発電事業第一部長は「10年にわたる海外での実績と培った知見がある。それを国内市場で最大限活用する」と話す。

 欧州での価格競争は激化の一途をたどり、1キロワット時10円を切る。三菱商事グループも16年、オランダでの事業を7・1円で落札した。

 資源エネルギー庁風力政策室の菊池沙織室長補佐は「欧州では風車の大型化が進み、発電効率が向上し、コスト低減が加速している」と指摘する。

 政府と産業界は20年、洋上風力の競争力強化を目指し、30~35年までに発電コストを1キロワット時8~9円にする目標を設定。国内も追随の流れが進む。

「共存策を示す」

 「売電価格が下がる中、見込んでいる収入が入らなくなるのでは」

 1月25日、国の促進区域への指定に向け、国と秋田県が秋田市で開いた有望区域の「男鹿市・潟上市・秋田市沖」法定協議会。鈴木雄大潟上市長が漁業者らの不安を代弁した。

 三菱商事グループが落札した2海域と昨年9月に促進区域に指定された「八峰町・能代市沖」(事業者公募中)では、地域や漁業との共存策として、基金を設けることが指定の留意事項に盛り込まれた。選定事業者は20年間の売電収入見込み額の0・5%を基金に拠出する内容だ。

 地元には売電価格が下がれば収入が減り、基金拠出額も減るのではとの懸念がある。鈴木市長は「0・5%にこだわらず、拠出額が減らないよう検討してほしい」と要望した。

 三菱商事グループは落札した2海域の地元に対し、水産関連のグループ企業を通じて漁業の販路拡大などに取り組むと提案。岩城部長は「基金のみに頼らず地域との共存共栄策を示していく」と理解を求める。

[促進区域]2019年4月施行の再エネ海域利用法に基づき、洋上風力発電施設を優先整備する海域を国が促進区域に指定する。区域内ではこれまで3~5年だった海域利用期間が30年まで認められる。国は早期に促進区域に指定できる見込みがある海域を「有望区域」に選定。地元漁業者ら利害関係者による法定協議会を設置し、同意を得て促進区域に指定される。

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