トマト栽培、振動装置で害虫防除&受粉促進 東北特殊鋼など特許

振動発生装置を用いた防除や受粉の仕組みを説明する関根さん=名取市の県農業・園芸総合研究所

 東北特殊鋼(宮城県村田町)などが参画する研究グループは、「磁歪(じわい)クラッド材」を用いた振動発生装置が、トマト栽培施設での防除と受粉に効果があるとの研究成果をまとめ、昨年12月に特許を取得した。化学農薬に頼った栽培からの脱却につながり、さまざまな害虫への応用が期待される。同社は2023年度をめどに、振動装置を商品化する予定だ。

コナジラミの幼虫減る

 「振動農業技術コンソーシアム」は電気通信大が代表を務め、同社や宮城県農業・園芸総合研究所(農園研)、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所が参加する。

 研究では、振動がトマトの天敵であるコナジラミ類の定着を防ぐとともに、受粉を促進する効果を検証。トマト栽培室の天井から水平につるしたパイプに振動装置を設置し、パイプと垂直に接触する金属ワイヤを通じてトマト株に振動を伝える仕組みだ(図)。

 異なる周波数の振動を一定の期間と頻度で与え、トマトの葉に寄生するコナジラミの幼虫を数えたところ、300ヘルツの振動を与えたトマトの害虫の数は、振動を与えないトマトの半分程度になった。より弱い30ヘルツの振動を与えた株からの果実数は、振動を与えない場合、ホルモン剤を噴霧した場合の両方を上回った。

磁歪クラッド材を使った装置でトマト株に振動を伝える仕組み(森林総合研究所提供)

交尾を阻害か

 農園研によると、コナジラミ類は交尾などの際に振動を使ってコミュニケーションを図っており、人工的な振動で特定周波数を与えることでこれを阻害しているとみられる。多くの昆虫は振動から交尾の相手や捕食者を認識しており、振動を用いた防除はさまざまな害虫への応用が期待できるという。

 一般的にトマトの防除には化学農薬や防虫ネットを使う。施設栽培ではホルモン剤や外来種のハチを使って受粉を促す必要もあり、いずれも農家にとっては労力や手間、経費が負担になっている。

 農園研の関根崇行上席主任研究員は「薬剤散布などの回数を減らせて、労力軽減につながる。防除や受粉の手段が増えて、生産者にとっては選択肢が広がる」と振動を活用する意義を説明する。

[磁歪クラッド材] 一部金属が磁化したときに伸縮する「磁歪」という性質に着目して、東北特殊鋼と東北大が2016年に開発に成功した新素材。交流電流を流して磁化させた際、上下に振動する特性を持つ。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る