子どもたちの「家庭養護」震災後に広がる 最善の環境へ多様な受け皿必要

 東日本大震災後、実親の元で暮らせない子どもを地域で支えようと、里親の家庭で養育する機運が高まった。11年が経過した今、家庭養護を巡る状況はどう変わったのか。関係者に話を聞いた。(生活文化部・越中谷郁子)

「洗濯は1日5回。子どもの送迎にも時間がかかる。補助者がいることで見守る大人が増え、養育環境が健全になる」と話す菊地さん夫婦

 仙台市泉区の里山に、養育里親の菊地史朗さん、由紀子さん夫妻=ともに(51)=が運営するファミリーホーム(FH)「Bird Tree」がある。古民家を改装した平屋の一軒家に、中学2年の実子1人、幼稚園年中から小学6年までの里子5人と計8人で暮らす。

 史朗さんは「毎日にぎやかで、家族というより、一緒に楽しく過ごす仲間のような感じ。子どもたちにとって、自分たちが一番信頼できる大人でありたい」と話す。

 菊地さん夫妻は、実子が通っていた幼稚園に家族と暮らせない子がいたことをきっかけに、2016年に養育里親に登録し、20年にFHに移行した。「実親と交流があるかどうか、自分たちと同じ姓を名乗るかどうか。子どもたちの状況はそれぞれ違う。FHなら家庭の良さを生かしながらも親子やきょうだいの枠にとらわれず、里親がその子にとってどんな役割を担うべきか柔軟に考えられる」と史朗さんは言う。

 FHは、親の病気や貧困、虐待などで実親と暮らせない子5、6人を、養育里親の経験者らと補助者が3人以上で育てる制度で、09年に国が導入した。児童養護施設と里親家庭の中間的な存在で、里親に子どもを取られるのではないかと心配する実親にとって、委託のハードルが低いとされる。宮城県内では、震災前の2カ所から10カ所(うち仙台市内は4カ所)に増えた。さらに1カ所、開設の準備が進む。

 震災を機に仙台市太白区には14年、家庭養護と里親の支援を目的に「子どもの村東北」が開設され、これまでに一時保護を含め約120人の子を受け入れた。

 「ニーズは多岐にわたっていた」とNPO法人「子どもの村東北」の飯沼一宇理事。直接被災した子に限らず、被災していなくても震災をきっかけに親が精神疾患を抱えたり、家計に打撃を受けたりして、震災の影響は今も残るという。

 今後は、新型コロナウイルスの影響も懸念される。臨床心理士の川村玲香さんは「生活に困難を抱える人が増える。震災時と同様に、長期的に親を支援して子どもの育ちを見守らないといけない」と語る。虐待を未然に防ぐため、親への研修や相談事業を強化する考えだ。

 厚生労働省の福祉行政報告例によると、宮城県の登録里親の推移はグラフの通り。震災前の10年度と比べ、養育里親は11年度に1・6倍の159世帯、20年度は2・7倍の257世帯に増えた。親族里親は、震災で保護者を亡くした子を養育する祖父母らが登録し、11年度に5倍の45世帯に増えたが、子の自立に伴い減少している。

 国は家庭養護に力を入れ、3歳児未満の里親委託率を24年度までに75・0%(FHを含む)、3歳児以上の未就学児は26年度までに75・0%(同)、小学生以上は29年度までに50・0%にする目標を掲げる。

 宮城県では社会的養護が必要な子どもが10年度の495人から、震災後の11、12年度には約600人に増えたが、その後は減少傾向にある。20年度の要保護児童は490人(うち仙台市245人)で、全年齢の里親委託率は県が42・6%、仙台市が38・4%だった。

 県は29年度の目標を61・3%、仙台市は49・4%に設定するが、里親と里子が良好な関係を築けず、養育が困難になるケースもある。菊地さんは「子どもはもちろん、里親も深く傷付き、登録を取り消す人もいる。子を委託する仙台市には、里親をフォローする機関を設けてほしい」と訴える。

 県が17年に開設した「みやぎ里親支援センターけやき」は、里親の新規開拓から委託前後の研修や相談、里親同士の交流事業などを担う。養育里親歴36年の卜蔵(ぼくら)康行センター長は「保護される子が抱える課題は、虐待や生活困窮、障害などさまざまな要素が絡み合い、複雑化している。子どもが健やかに育つには、里親を増やすだけでなく、養育の質を高めることも求められる」と話す。

 宮城県では少子化が進むが、要保護児童は今後も500人前後で推移すると見込まれる。ト蔵さんは「里親委託だけでなく、児童養護施設も含め多様な受け皿を用意し、子どもにとって最善の育ちを考えることが大切だ」と指摘する。

[里親]児童福祉法に基づき、実親と暮らせず社会的養護が必要な子どもを原則18歳まで家庭で育てる。養育里親の他、障害があるなど特に支援が必要な子を育てる専門里親、3親等以内の親族である親族里親、子との養子縁組を希望する養子縁組里親の4種類がある。児童相談所を通じて申し込み、所定の研修受講などを経て社会福祉審議会で審議され、知事、政令市長に認定されると里親登録できる。

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