臨床教員確保、修学資金持続が課題 東北医科薬科大の6年(下)

 東日本大震災の復興支援で誕生した東北医科薬科大医学部の1期生が今月卒業した。6年間の教育への評価と今後の課題について、学校法人東北医科薬科大理事長でもある高柳元明学長に聞いた。

[たかやなぎ・もとあき]東北大医学部卒。東北大講師、カナダ・マクマスター大博士研究員などを経て、2000年から東北薬科大教授。01年に学校法人東北薬科大理事長・学長となり、16年から現職。専門は内科学(呼吸器・アレルギー)。73歳。水戸市出身。

 -卒業生の7割近くが臨床研修で東北にとどまる。

 「新型コロナウイルス禍で滞在型の臨床実習は十分できなかったが、各県の医療担当者を招いて地域医療の実態を話してもらうなど特色ある授業はできた。『卒業後は東北に定着してほしい』と学生には常々伝えており、理念は浸透していると思う」

 「国公立大並みの学費で学べる修学資金枠は、私立では破格。いい学生が集まり、使命感を持って勉強した。全国平均を上回る96・8%の医師国家試験合格率は、その現れだろう」

 -医学部開設当初と雰囲気の違いはあるか。

 「地域住民は当初から大きな期待を寄せてくれたが、医療関係者からは(患者を奪われるなどと)反対され、責められた。徐々に理解されるようになり、今は医師会も、もろ手を挙げて歓迎してくれている」

 「(前身の東北薬科大)卒業生の存在や支援も大きい。東北の病院には本学出身の薬剤師が必ずいる。学生たちには心強いだろう」

 -卒業生のキャリア形成に何を望む。

 「従来の医師は専門領域では深い知識と技術があるが、幅広い分野を診られるとは言い難かった。ある程度の専門分野があり、かつ幅広く診られる総合診療医が望ましく、目指してほしい」

 「専門医資格の取得を目指す卒業生もいる。派遣先の病院で勤務しながらの取得は大変だが、頑張って両立させてほしい。将来、本学での教育を担う可能性もあり、大学院での学位取得にも挑戦してもらいたい」

制度設計時より自治体病院経営厳苦しく

 -修学資金制度は続けるのか。

 「今後5年程度の入学志願者の動向、卒業生の地域定着を見て必要性を検討する。学生のうち東北出身者は3割前後だが、東北にこだわると幅広く集められない。全国各地から優秀な学生に来てもらい、東北定着を目指す」

 -大学組織や制度に運営上の課題はあるか。

 「教室で教える基礎系の教員は足りているが、実習が伴う臨床系の教員は複数人のチームで来てもらうため不足がちだ。引き続き人材確保に努める」

 「宮城県の修学資金を得た医師を受け入れた自治体病院が、修学資金の原資となる基金に医師1人当たり年間300万円を繰り入れる仕組みを持続できるか懸念がある。制度設計時よりも自治体病院の経営が苦しくなっているためだ。継続的に医師を受け入れる病院の確保は大きな課題だ」

河北新報のメルマガ登録はこちら
3.11大震災

復興再興

あの日から

復興の歩み

企画特集

先頭に戻る