卒後10年のキャリア形成明示急務 東北医科薬科大の6年(中)

医学部1期生を送り出した東北医科薬科大。卒業後も関わりは続く=仙台市青葉区

 「10年間どう働くのか。医師としてのキャリアアップにつながるのか」

 宮城県から修学資金を得た東北医科薬科大医学部1期生の海賀俊征さん(39)=栃木県出身=は、すっきりしない思いを抱えながら4月から2年間、盛岡市の病院で臨床研修する。その後10年間、宮城県内で勤務するのが返済免除の条件だ。

 宮城県の資金枠は1学年30人で、東北6県の中で最も多い。クウェートが宮城県に贈った復興支援金を原資に、これを管理する団体の賛助会員の自治体病院が修学生を雇う。病院側が1人当たり年間300万円を管理団体に支払い、資金を循環させる。

 地域医療を担う総合診療医の育成を掲げる大学と、海賀さんら8~10年間にわたり地域に「拘束」される卒業生らの双方を悩ませているのが、2018年4月に始まった「新専門医制度」だ。

 臨床研修を終えた医師が特定の診療科領域に関し、3年間の研修プログラムを受けることで専門医の資格を取得できる。ただ、臨床研修後に勤務の受け皿となる医療機関の多くは研修プログラムに対応できず、全員のニーズは満たせない。

 海賀さんは学生側のリーダーとして、キャリア形成の在り方について大学側と意見交換してきた。初期研修後の10年間は大病院で3年、地域の診療所で3年、残りの4年を本人の専門に近い診療科で働くという大枠が大学から示されたが「後輩のためにも、より明確な道筋がほしい」と望む。

 大学は内科や外科、小児科などの専門医資格を10年間に取得可能とするため、受け皿の医療機関に協力を求める方針。新年度には「修学資金医師支援センター」も新設し、宮城県やこれまで県内の医療機関に医師を派遣してきた東北大と共に卒業生の勤務先やキャリア形成を検討する。

 東北医科薬科大の大野勲医学教育推進センター長は「専門医資格は総合診療の土台となる。学生らの要望にはできるだけ応えたい。卒業生は『行ってよかった』、地元は『受け入れてよかった』と思える形にしなければならない」と話す。

「総合診療医」か「専門医」か

 「長く東北の医療現場で活躍することを期待する」。8日の卒業式で医学部1期生をこう激励した宮城県の村井嘉浩知事は式後、県枠の医師をどう支えるかを記者に問われ、「東北大や自治医大など他から来る医師らと同じ土俵で支援したい」と述べるにとどめた。

 先達もおらず実績もない新設医学部の卒業生をつなぎ留めるには、特に初期は手厚いサポートが必要になる。ある東北大幹部は「(1期生の臨床研修が終わる)2年後以降が正念場だ。どれだけ東北に残るか。医学部を誘致した宮城県の姿勢も問われる」と指摘する。

 NPO法人医療ガバナンス研究所(東京)の上昌広理事長は「地域医療を充実させるためにも、東北医科薬科大の学生は高度な専門知識を持つ医師に育てるべきだ。10年後に身分保障がないまま放り出されないよう、自治体で採用するなどの手だても考えるべきだ」と提案する。

[新専門医制度]内科、外科など診療科ごとに研修プログラムがある。資格取得を目指す医師は数カ所の医療施設で勤務するほか、外科では消化器官や心臓などさまざまな部位の手術を執刀医として百数十例経験する必要がある。試験と合否判定は各学会が実施し、第三者機関の「日本専門医機構」が認定する。

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