飲食業界の人手不足深刻 求職者、先行きや感染リスクに二の足

多数の飲食店が軒を連ねる東北一の歓楽街・国分町=仙台市青葉区

 飲食業界の人手不足が深刻化している。新型コロナウイルス禍が長期化の様相を見せる中、求職者が業界の将来を悲観したり、感染リスクに二の足を踏んだりする動きが加速しているようだ。客足が戻りつつある店舗側にとっては、業績回復のボトルネックになりかねない。東北最大の消費地、仙台市の現状を取材した。(編集局コンテンツセンター・小沢一成)

バイト足りず入店制限

 市中心部の広瀬通に面した居酒屋「伊達藩長屋酒場」。コロナ禍で客足は一時落ち込んだものの、今年3月中旬以降は持ち直し、ゴールデンウイークにかけてコロナ前の7割程度まで集客が回復する見通しだ。

 しかし、工藤桂一郎店長は「アルバイトが足りず、お客さまの入店を制限しながら営業している」とため息をつく。コロナ前の必要数に比べアルバイト7人、社員1人が不足しているといい、来店客の受け入れ態勢を整えるのに四苦八苦している。

 背景として、工藤店長は「長い閑散期に休業などを強いられ、人員募集ができなかった」ことに加え「感染リスクを心配し、飲食店でのバイトを敬遠する大学生が多い」ことを挙げる。

 同店のバイト時給は1150円(深夜1250円)と宮城県平均を上回っているにもかかわらず、人手の確保が追い付かない。店内ではアルコール消毒の徹底などコロナ対策に万全を期しており、工藤店長は「空いている時間で構わない。年齢も問わない」とスタッフ募集を呼び掛けている。

居酒屋で働くアルバイトの女性。仙台市内の飲食業界で人手不足が深刻化している=仙台市青葉区一番町の伊達藩長屋酒場

 県内と東京都内で飲食店「かき小屋飛梅」などを展開する飛梅(仙台市)は、宮城県名取市の商業施設「かわまちてらす閖上(ゆりあげ)」で4月中にも牛タン専門店を新規出店するため、準備を進めている。が、松野勝生会長は「店長級や調理長級の人材がなかなか来ない」と嘆く。

 仙台市内のグループ店の中には人手不足により、休業を余儀なくされている店舗もある。松野会長は「飲食業界がコロナ禍で決定的なダメージを受け、『この世界には未来がない』と言う人もいた。飲食店が閉店しても労働市場に人材が流れてこない」と憂える。

上昇基調続く求人倍率

 宮城労働局によると、今年2月の職業別有効求人倍率で仙台公共職業安定所管内の「飲食物調理」は前月比0・22ポイント上昇の3・70倍だった。有効求人1571人に対し、有効求職者は425人にとどまった。

 飲食物調理の有効求人倍率は、新型コロナウイルス特措法に基づく政府の緊急事態宣言が全国に拡大した2020年4月を境に下落に転じ、20年6月から21年9月までコロナ前より低い2倍台で推移した。コロナの感染状況が一時落ち着いた21年10月に3倍を突破し、以降も上昇基調が続く。

 「接客・給仕」も同様の傾向で、仙台職安管内の今年2月は4・22倍だった。21年11月に4倍を超え、高水準で推移している。

 民間信用調査会社の帝国データバンクが今年1月に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」(有効回答1万1981社)によると、飲食店で正社員が不足していると回答したのは65・1%で、パートやアルバイトなどが不足していると答えたのは76・6%に達した。

 帝国データバンク仙台支店情報部の紺野啓二部長補佐は「正社員は業界に将来的な魅力がないと(募集しても)来ない。アルバイトには『飲食店は感染リスクが高い』と思われているのだろう」と指摘する。

 その上で「『ウィズコロナ』の時代は宴会をしても少人数で、2次会、3次会は難しいとなると市場規模が小さくなる。(人手を確保しようと)人件費を引き上げると収益を圧迫する」と述べ、飲食業界の苦境を説明する。

 リクルート(東京)の調査研究機関「ジョブズリサーチセンター」によると、宮城県内の飲食業のアルバイト・パート募集時平均時給は、今年3月で前年同月比3・1%増の910円だった。人手不足の状況を反映し、このところ、上昇基調で推移している。

 こうした中、飛梅は4月から都内の2店舗で、単発アルバイトの仲介サービスを使い始めた。空いた時間に働く「隙間バイト」を確保することで「想像以上に助かっている」と松野水緒社長。「1日だけという働き方が今どきのZ世代(1990年代半ば以降に生まれた若者)に合っているのだろう。今後、需要が高まるのではないか」とみる。

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