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「♪ヤンヤンヤヤー八木山の~」ベニーランド、「としまえん」とも深い縁

好天に恵まれ、大勢の来園者でにぎわう八木山ベニーランド=2022年4月17日、仙台市太白区の八木山ベニーランド

 東北初の総合遊園地として誕生し、半世紀以上にわたって地域で愛され続ける八木山ベニーランド(仙台市太白区)。2020年8月に閉園した東京都練馬区の老舗遊園地「としまえん」から受け継いだ遊具があったり、「日本一遅いジェットコースター」が運行されていたりと、意外に知られていない話題がいっぱい。本格的な行楽シーズンを前に、杜の都を代表するレジャー施設のあれこれを調べました。(編集局コンテンツセンター・小沢一成)

まずはここから…「仙台読本」

としまえんから移設され、20周年を迎えた「メガダンス」

架け橋になった「メガダンス」

 「仙台と練馬の大切な架け橋。いつまでも仙台の皆さまに愛されてね」「人生には遊園地が必要だ」「これからもたくさんの人たちを乗せて頑張れ」―。今年で導入20周年を迎えた大型回転遊具「メガダンス」の係員室に、としまえんファンから寄せられたメッセージが飾られている。

 八木山ベニーランド園長で、運営会社エイトリー(仙台市)の八木充幸社長によると、メガダンスは当初、としまえんにあったが遊具の配置変更に伴い、メーカーを通じてベニーランドが2002年に引き継いだ。縦、横、斜めに動き、空中に放り出されるような感覚が楽しめるとあって根強い人気を誇る。今では国内で稼働する唯一の機体となった。

「メガダンス」の導入20周年を祝い、としまえんファンから贈られた寄せ書き

新天地で活躍期す

 360度2回宙返りコースター「コークスクリュー」も、としまえんを抜きに語れない。21年3月にデビューした黄色い現車両は、としまえんからやってきた。1980年に導入した初代車両より新しく、座席の幅が広いなど機能が充実している。

 八木社長は「としまえんは東京を代表する遊園地で、われわれのお手本だった。せめて車両だけでも新たな場所で活躍してくれれば、ファンはうれしいのではないか」と思いを語る。

としまえんから仲間入りしたコークスクリューの2代目車両。車体カラーは初代の赤から黄色に変わった

名前は「紅久」が由来

開園日の1968年4月14日に河北新報朝刊に掲載されたベニーランドの広告。ジェットコースターや大型ティーカップなどは今も人気だ

 実は今、としまえんで親しまれたファミリー向けコースター「ミニサイクロン」の車両を移設する計画が進んでいる。東北で最も古い現役のジェットコースターが老朽化に伴い引退する予定で、2023年春をめどに後継車両として活用する方針だ。

 八木山ベニーランドが開園したのは1968年4月14日で、今年で55年目に入った。園名は運営会社エイトリーの親会社で、一帯の土地を所有していた「紅久(べにきゅう)」に由来している。同社は江戸時代に紅やおしろいを扱う小間物商として開業した歴史がある。

「日本一遅いジェットコースター」も

 約30万平方メートルと広大な敷地に約30種類のアトラクションを用意。最も人気があるのはゴーカートとジェットコースター、急降下のスリルを味わえる「海賊船パイラット」だ。このほか、最高時速14・8キロの飛行機型つり下げコースター「エアロ5」は、2020年11月の民放バラエティー番組で「日本一遅いジェットコースター」に認定され、話題となった。

人気アトラクションの一つ「海賊船パイラット」

おなじみのCMソング

 園内に入ると、「♪ヤンヤンヤヤー八木山の~」でおなじみのテーマソングが流れてくる。開園記念で制作された曲で、歌っているのは「CMソングの女王」と呼ばれた歌手で女優の天地総子(ふさこ)さん=19年死去=。杜の都のご当地ソングとして市民に親しまれており、園内の売店でCDを販売している。

 ベニーランドのキャラクターは男の子の「ベニーニョ」と女の子の「ベニーニャ」。東日本大震災をきっかけに復興に向けたシンボルとして誕生した。子どもの笑顔を表現した「ベニーマーク」を生かし、ベニーランドの「ベ」を愛らしく図案化した。

八木山ベニーランドのキャラクター「ベニーニョ」(右)と「ベニーニャ」

ピークは年50万人来園

 東北一円から客が訪れ、新型コロナウイルス禍前は小学校の修学旅行先としても人気があったベニーランド。近年の客層はファミリー層が中心で、家族3世代で訪れるグループも多い。15年の仙台市地下鉄東西線開業後はアクセスが良くなったため、子どもたちが友達同士で遊びに来ることも増えたという。

 来園者数のピークはコークスクリューを導入した1980年の50万人。バブル崩壊後の景気低迷やレジャーの多様化、少子化などの影響で、コロナ前は年間20万人程度で推移していたが、コロナ後は5~6割程度まで落ち込んでいる。

開園当時のベニーランド。今はなくなった回転展望台「ベニータワー」(中央奥)もある=1968年ごろ(八木山ベニーランド提供)

遊園地の閉園相次ぐ

 仙台市内では2015年に仙台ハイランド遊園地が閉園し、ベニーランドが唯一の総合遊園地となった。全国でも20年にとしまえん、21年にかしいかえん(福岡市)が相次いで閉園するなど、遊園地が姿を消しつつある。

 厳しい経営環境の中で、ベニーランドが掲げるキャッチフレーズは「懐かしいけど新しい」。ステージショーやコスプレフェスティバルといったイベント企画にも積極的で、八木社長は「ハード、ソフト両面で新しいことに取り組み、楽しさを演出したい。心の古里を目指す」と意気込む。

〔八木山ベニーランド〕
▽今季の開園期間 2022年3月12日~11月23日、11月26日~12月25日の土日。23年1月1~3日、7~9日
▽開園時間 午前9時~午後5時
▽入園料 子ども(3歳~小学生)500円、大人(中学生~64歳)1000円、シニア(65歳以上)500円。フリーパスは子ども3200円、大人3700円、シニア3200円
▽住所 仙台市太白区長町越路19-1
▽電話 022(229)1603

八木山ベニーランドの公式サイト
家族連れでにぎわう休日のベニーランド

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