仙台伝説の謎給食「ずんだ春巻き」とは 子ども思いの栄養士さんが発案したメニューだった

「ずんだ春巻きは今もあるの?」。全国学校給食週間(24~30日)に合わせてツイッターで質問を募ったところ、複数の市民から同様の投稿が寄せられた。甘いずんだあんを春巻きの皮で包んで揚げた一品で、食べた人たちがそろって「衝撃的だった」と振り返る。伝説の仙台ローカル給食メニューは、どのように生まれたのか。
(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)
投稿者を介し、開発の経緯を知る人に話を聞くことができた。かつて仙台市教委で給食技師をしていた高橋真智子さん(70)=宮城県富谷市=。貝森小(青葉区、2015年閉校)に勤めていた1991年の夏休み期間、同僚の栄養士グループが発案したずんだ春巻きの試作に携わった。
塩と砂糖の分量を細かく変え、揚げたり焼いたりし、試作と試食を繰り返した。「食べているうちに(味が)よく分からなくなって、みんなで大笑いしながら作った」と懐かしむ。
枝豆をすりつぶして作る宮城の郷土料理ずんだ餅に親しんでもらうのが狙いだった。大量の餅を中心温度80度まで加熱する時間と労力がかかるため、配膳もしやすい春巻きにするアイデアが生まれたという。

レシピを決めて業者に発注し、翌92年2月ごろ、給食での提供が始まった。子どもたちは驚いた。普通の春巻きだと思って食べると、色鮮やかな緑の甘いあんが中から出てくるからだ。
「1、2年生は甘いと喜んでいたけど、上級生や先生からは『おかずなの? デザートなの?』と言われ、反応はいまひとつだった」と苦笑いする。その後いつからか、ずんだあんにチーズが加えられた。
今も給食に出ているのだろうか。複数の関係者の話を総合すると、少なくとも2018年ごろまで荒巻、高砂、南吉成の各学校給食センターで使われていた。献立の組み合わせが難しいと敬遠され、冷凍の白玉団子を使ったずんだ団子への置き換えが進み、姿を消してしまったようだ。
高橋さんは「郷土料理をアレンジする挑戦は楽しかった。皆さんの記憶に残るメニュー作りに加われてよかった」とにっこり笑う。

調べれば調べるほど、どんな味だったのか気になる。小中学校時代を九州と宮城県北で過ごした記者(40)は食べた記憶がない。食べられる場所を探すと、仙台市青葉区大町の創業53年の老舗中華料理店「紅龍」にたどり着いた。
紅龍は2000年ごろから、ずんだ春巻きを1本120円で提供する。揚げたてを頬張ると、かりっとした食感に続き、枝豆の風味と粒感が口に広がった。甘みは控えめ。韓国の餅トッポギが入っており、腹持ちは良さそうだ。

店主の石川善寿(よしじゅ)さん(82)は「ラーメンにプラスして頼む人もいるし、宴会の最後に出すスイーツとしても喜ばれる。子どもへのお土産に10本20本まとめて買って帰る人もいて、一年中売れている」と話す。
知人から大量の枝豆を譲り受けたことをきっかけに考案した。ずんだ春巻きが学校給食で出されていたことは知らなかったという。「誕生の経緯や味付けは違うようだが、食べてみたい人はぜひどうぞ」

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