男性の更年期障害患者増 過度なストレスも引き金に

 全身の疲労感、不眠、イライラ…。こんな症状に悩まされている中高年男性が注意したいのが、男性更年期障害だ。ストレスとの関連が指摘され現代的な病とも言えるが、女性の更年期障害と比べると認知度は低く、適切な治療につながりにくい。専門医や症状に悩む男性を取材した。
(生活文化部・安達孝太郎)

患者数前年度の約1・7倍 生活に支障、休職する人も

 「仕事の集中力が続かない」「朝から本当にだるい」。男性更年期の治療を行っている「みやぎ健診プラザ」(仙台市若林区)では、こんな訴えをする患者が近年増えている。2021年度の男性更年期の新規患者数は168人で、前年度の約1・7倍。生活に支障を来し、会社を休職する人もいる。

 みやぎ健診プラザ泌尿器科部長の並木俊一医師によると、日本の学会で男性更年期が取り上げられるようになったのは20年ほど前から。「中高年男性の自殺者数の増加や、社会の急激な高齢化を背景に徐々に注目されてきた」と指摘する。

 AMSスコアと呼ばれる質問票(表)で症状を自己評価でき、中程度以上が受診の目安となる。医師による診断は主に血中にある男性ホルモンの一種「テストステロン」の検査で行われ、血中濃度を年齢別の基準値と比較する。テストステロンは30歳ごろから減少し始め、ストレスなどで急激に減少すると男性更年期の引き金になる。

 治療方法は注射などによるテストステロンの定期的な補充で、漢方薬を使うこともある。主な症状の一つである性機能障害があれば並行して治療する。テストステロンの値は有酸素運動で上昇し、睡眠不足で下降するなどの研究報告があり、並木医師は「生活習慣の改善はとても大切」と強調する。

男性更年期障害の治療を行っている並木医師

管理職多い傾向、職場の理解必要

 バランスの取れた食事も重要。亜鉛の摂取がテストステロンの増加につながることが知られており、患者らには亜鉛を含むカキ、アサリ、ニラといった食材が推奨される。

 男性更年期になりやすいのはストレスを感じやすい状況にある人で、医療や介護、教育などの従事者は比較的かかりやすい。生真面目な人も要注意で、管理職の受診が多い。肥満の人もテストステロンの値が低くなる傾向がある。

 NHKや独立行政法人労働政策研究・研修機構などが21年に40、50代に実施した調査によると、現在、または過去3年に症状を経験した男性は8・7%(女性は36・8%)。症状を経験中の男性は、管理職の占める割合が高い傾向が示されている。

 並木医師は「治療で改善してもストレスがかかるとすぐに悪化することもある。治療と仕事を両立させるためにも職場の理解が必要だ」と指摘する。

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 男性更年期の専門医は、日本メンズヘルス医学会ホームページの「メンズヘルス外来一覧」などに掲載されている。

[男性更年期障害]一般に40代以降で発症する。中高年の6人に1人は男性ホルモンの一種「テストステロン」の値が低いが治療に至っていない「潜在患者」だとするデータがある。女性は更年期障害になっても閉経後5年ほどで状態が落ち着くのに対し、中高年男性は何歳でもなる可能性がある。テストステロンの減少は認知機能の低下や心血管疾患、内臓脂肪の増加などの原因となることもある。

診断受けた宮城の男性「食事も入浴も面倒に」当初はうつ病と診断

 男性の更年期障害はうつ病と似ている症状があるため、心療内科や精神科で気付かれないことが少なくない。いったんうつ病と診断された宮城県南の会社員男性(43)は「心療内科の医師らにも、男性更年期の知識を持ってほしい」と訴える。

 「テストステロンの量が70、80代並みですね」。更年期の治療を行っている仙台市の病院で、医師から血液検査の結果をこう告げられた男性は、ショックを受けるよりも「やっと原因が分かった」とほっとしたという。

 30代後半から活力の低下を感じていた男性が、本格的に体調の異変を感じ始めたのは41歳の時。社内会議で説明をする際、脇からの汗が止まらなくなった。「通常の10倍、20倍という感じで、汗でびたびたになった」

 間もなく急に元気がなくなり、食事も入浴も面倒になった。仕事にも支障が出始め、心療内科を受診して、うつ病と診断された。

 「休職して服薬を2、3カ月続けたが一向に良くならず、おかしいと思った」。インターネットで調べると、男性更年期の症状と一致し、診察できる医師を探して治療を受け始めた。テストステロンを定期的に注射することで順調に回復している。

 男性は「子どもがいるし、家のローンもある。あのまま心療内科に通い続けていたら、今頃どうなっていたか」と振り返った。

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