「お試し」解約できず 狙われる新成人(1)定期購入商法

 社会経験の少ない大人になったばかりの「若年成人」が、金銭の絡む犯罪やトラブルに巻き込まれるケースが後を絶たない。今年4月に民法が改正され、若年成人は18、19歳に幅が広がった。手を変え品を変えて繰り返される悪徳行為に立ち向かってきた仙台弁護士会の弁護士らに過去の事件簿をひもといてもらった。

女性が被害を訴えた定期購入商法の広告(画像は消費者庁提供。一部を加工しています)

電話つながらず

 きっかけは2019年12月、ネットで見た東京の通信販売会社の広告だった。

 「初回無料で美ボディーを手に入れる」

 首都圏の私立大生だった女性=当時(19)=は、豊胸効果をうたう表示に心躍った。「いつでも解約OK」という文言も背中を押し、軽い気持ちで注文してみた。

 間もなく60錠入りの商品が届いたが、麦芽糖や食物繊維といった成分を見て効果に疑問を感じ、服用しなかった。会社のインターネットサイトを見ると、下部に小さく「定期購入」の記述があった。解約の電話を何度かけてもつながらず、サイトの問い合わせフォームに解約の旨を入力した。

 翌月にも商品が届いたが、手違いだと思い放置した。その後、コロナ下でリモート授業になったのを機に宮城県の実家に戻った。

 注文から2年以上たった今年2月下旬、思いも寄らないメールが届いた。通信販売会社の代理人を名乗る法律事務所が、定期購入契約に基づき9カ月分の料金計約10万円を請求する内容。「法的措置を取る」という文言もあった。

 「お試しと誤解させて、勝手に定期購入契約を結ぶ詐欺的な商法だ」。女性からの相談を受けた仙台弁護士会の男沢拓(ひらく)弁護士は直感した。代理人に受任通知を郵送し、女性に支払い義務がないことを告げた。相手側から連絡は来ていない。

広告画面証拠に

 この会社を巡るトラブルは全国各地で続発していた。消費者庁によると19年3月~20年12月、全国の消費生活センターに相談が約2000件寄せられ、女性のように「解約できない」といった内容が多かった。相談者のうち、10代と20代が占める割合は3割を超えた。

 消費者庁は会社がサイトの注文確認画面で2回目以降の代金を表示せず、購入者からの解約通知がなければ無期限の契約になることを明記していないケースを確認。解約条件を小さく表示していた例もあった。消費者庁は20年12月、特定商取引法に基づき、6カ月間の業務停止命令を出した。

 外見を気にする若い世代は「美容」や「筋肉増強」といったキーワードに反応しやすい。コロナ禍の外出自粛でインターネットを見る時間が増えたことも拍車をかけた。国民生活センターによると、定期購入に関する相談は20年度で約5万5000件に上り、18年度の約2・5倍に増えた。

 男沢弁護士は「『初回無料』をうたう広告は疑った方がいい。悪質業者の可能性が高い。被害に遭ったら広告画面を証拠として保存し、消費者相談機関に連絡してほしい」と話す。
(報道部・氏家清志)

[若者の消費者被害]国民生活センターの2020年度の統計によると、年齢別の消費者契約トラブル数は、20代前半の各年齢の平均が7741件で、未成年の18、19歳の平均の約1・5倍あった。若年成人の相談はデジタルコンテンツ関連が最も多く、健康食品、エステなどが続く。
[定期購入商法]無料や割引を初回特典として商品を購入させるとともに、次回以降の商品の定期購入契約を結ばせる商法。初回で解約すると違約金が発生したり、定期購入が長期に及んで高額になるなどトラブルになるケースが多い。10代と20代ではダイエットサプリメントや脱毛クリームなどの商品に関する相談が多い。

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