かつては男子中心、ラグビーやサッカー… 「女子も一緒」当たり前に

 野球、サッカー、ラグビー…。かつては女子に縁遠いとも思われていた競技を、小中学校の女子が男子と一緒に楽しむのが当たり前となっている。背景には、男女別では組織維持が将来的に難しくなるというチーム事情もある。思春期特有の身体・心理面の影響を考慮しつつ、性差にとらわれずスポーツに親しんでもらおうと指導者は工夫を重ねる。
(生活文化部・浅井哲朗)

仙台ラグビースクールの練習風景。女子の活躍も目立つ=4月、多賀城市の仙台港多賀城地区緩衝緑地運動広場

競技人口増図る

 創設50年の仙台市のラグビースポーツ少年団「仙台ラグビースクール」。中学生までの団員約80人のうち女子は小学生以下の7人が所属する。スポーツ少年団の試合は男女混成で行われる。

 入団3年の小学6年太田史織さん(11)は「弟の入団をきっかけに体験練習してみたら、パスをつなぐのが楽しかった」と話す。学校で男女分け隔てなく話せるようになるなど、自身の成長を感じている。

 小笠原浩コーチ(60)は「2019年に日本で開催されたラグビーのワールドカップ(W杯)の影響で始めた女子は多い」とみる。今年の中学生の東北大会では、初めて女子チーム同士の対戦も予定されているという。

 「男女で一緒の練習メニューに取り組み、けがをしない体づくりや技術向上を図りたい」と説明する。

 少子化に伴い、市内のスポーツ少年団員数は減少傾向が続き、20年度には前年度比1割以上減った(グラフ上)。競技人口確保に向け、各団体は女子への門戸を広げている。

 市野球協会学童部会は幼稚園から参加できる簡易な「キッズベースボール」を展開してきた。現在、市内の野球少年団に所属する小学生女子は100人以上。「長期的な男子の減少に比べ、女子は横ばいか微減にとどまる」(部会幹部)という。

 11年に女子W杯を日本が制したサッカーは高校部活動の活躍もあり、宮城県内の小学生女子の登録者数は300~400人と堅調に推移する(グラフ下)。県サッカー協会は初心者向けの教室を定期開催して裾野拡大を図る。

配慮は欠かせず

 野球、サッカーなど主に男子に親しまれてきたスポーツは時に激しい接触がある。プレーに際しては女子のけがの予防などへの配慮が欠かせない。

 市宮城野区の新田小を拠点とするサッカースポーツ少年団リトルスターズは1993年、女子単独チームとして発足した。5年ほど前から男子も入り、本年度の小学生は男子4人、女子5人。男女混成で行われるサッカーの小学生年代で、女子主体のチームとして知られる。

 加藤義明監督(56)はコーチにOGを起用。生理など体調が優れない時に相談しやすくするなど、女子選手が安心して練習に打ち込める環境を整える。「情報を共有できるよう保護者とも強い信頼関係を築かなければならない」と強調する。

 女子は小学校高学年から中学生にかけての体形の変化が男子よりも大きい。難なくこなせていたプレーが急にできなくなることがあり、ストレスを感じる子もいる。その場合は助言し過ぎず、力を抜いてプレーできるまで見守るという。

 けがの予防に向け、リトルスターズでは体幹の筋力トレーニングにも注力する。サッカーに取り組んだ長女も膝のけがと手術を繰り返したという加藤さん。「長くプレーできるよう、小学生の年代では技術と体力の基礎づくりを大切にしたい」と話した。

栄養不足や無月経… 専門家「FAT注意」

 スポーツを楽しむ女子の健康をどう守っていくか。専門家は基礎的な筋力向上に加え、心理面への配慮も求めている。

 日本スポーツ協会の研究報告によると、同年代の男子と比較したけがの発生頻度は中高生女子の膝の前十字靱帯(じんたい)断裂が2~8倍、中学女子の足首の捻挫が1・5~2倍。骨格の成長期は筋力と柔軟性のバランスが不十分で、姿勢が崩れやすいのが原因の一つとされる。

 東北大病院整形外科スポーツ外来の秋貴史医師は「繰り返しのけがや靱帯断裂といった大けがを予防するためにも、軽い捻挫などの段階での適切な対処が求められる」と指摘する。

 小学校高学年以降は「FAT」と呼ばれる「女性アスリートが陥りやすい三つの障害」(エネルギー不足、無月経、骨粗しょう症)に注意が必要だ。練習で栄養の大半を消費してしまい、必要なエネルギーを体の成長に回せず、疲労骨折などを引き起こす。

 秋医師は「月経異常や体重変化によってパフォーマンスが変化し得ることにも、指導者は目を向けてほしい」と呼びかける。

 発達の早い女子は、小学生年代では体力面で男子より優位に立つ場合も多い。菊地直子仙台大教授(スポーツ心理学)は「体力や体格で逆転された時に戸惑いや不満を覚える子もいる。髪を切って自らの『女性性』を否定したり、生理を『邪魔』と感じたりすることもある」と説明する。

 「不安の中身を大人が丁寧に引き出すことで問題が本人の中で整理される。この共同作業で信頼感も醸成される」と菊地教授。子どもは無意識に大人の意向に従うため、「自らの経験だけに基づく助言は避け、偏見や予断は持たないでほしい」と指導者に注意を促した。

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