農山村で女性の地位向上 「みやぎアグリレディス21」発足20年

 宮城県内の女性農業委員らでつくる「みやぎアグリレディス21」が今年で設立20周年を迎えた。保守的な風土や「嫁」の立場から社会参画が難しい傾向にあった農山村で、女性農業者の地位向上に向けてさまざまな取り組みを進めてきた。農業振興にも寄与する活動の成果、展望を探った。
(生活文化部・菊池春子)

家族経営協定を結んで農作業に当たる佐々木さん夫妻=4月19日、登米市迫町

夫と「家族経営協定」結ぶ 

 登米市内の育苗ハウスで4月、佐々木まき子さん(68)が夫の清さん(68)と苗の手入れに汗を流していた。一見、普通の作業風景だが旧来の家族営農ではない。まき子さんは給与をもらう「労働者」だ。2010年に労働条件などを明文化する「家族経営協定」を清さんと結んだ。

 水稲管理などを手がける清さんは「意識が変わり、互いに責任感が生まれた」。主に野菜栽培を担うまき子さんも「労働に対価が伴うことで張り合いが増した」と話す。14年から市農業委員を務め、アグリレディスのメンバーとして活動している。

 会は02年、女性農業委員14人で発足した。1999年の男女共同参画法施行を追い風に、県内各地で女性委員が誕生したのがきっかけだった。委員への女性登用を自治体などに要請したり、研修会を開催したりしてきた。家族経営協定の推進にも努めてきた。

 2016年の法改正で新設された農地利用最適化推進委員も含め、メンバーは現在103人。県内各地の30~70代の幅広い層が集う。「女性同士でつながり、学び合えるのは本当に心強い」。メンバーの一人で梨栽培などを営む美里町の農業委員福田なほ子さん(67)が実感を込める。

 会の地道な活動もあって昨年度、県内全34農業委員会で女性委員が誕生した。3月には農林水産省などが後援する「農山漁村女性活躍表彰」で最高賞を受賞した。

農業の主要な担い手に

 女性の地位向上にとどまらず、メンバーは農業振興にも重要な役割を果たしている。

 仙台市の推進委員高山真里子さん(50)=若林区=は現在、西洋野菜などを育てつつ販路拡大にも力を入れる。「消費者の大半は女性。加工、販売など6次産業化が求められる中、意思決定の場に女性が入る意義は大きい」と強調する。

 会には東日本大震災を機にIターンした若手農業者も加わっている。南三陸町で小松菜を中心に栽培する星綾子さん(37)は東京の通信関係企業に勤めていたが、14年に復興支援活動を機に移住、就農した。18年に町農業委員になり、メンバーとなった。

 農業経験がなかった星さんを支えてくれたのが会のメンバーだった。「女性特有の悩みも含め、経験豊富な方々に相談できるのはありがたかった」と星さん。「都市部から移住した農業者のニーズを伝える役割を担いたい」と意欲的だ。

 かつて農村部の女性は農作業に加えて家事育児もこなさなければならず、公的な役職に就くことが難しかったとされる。近年は農業法人への就職や起業といった形で就農する女性も目立ち、農業の主要な担い手として存在感は増している。

 ジェンダー平等を目指すアグリレディスの活動について、農山漁村女性活躍表彰の審査委員長を務めた岩崎由美子福島大教授(農村生活論)は「女性農業委員の存在意義を示し、増やし続けた功績は大きい」と評価。「多様化する女性農業者の活動基盤としてさらに発展してほしい」と期待した。

[農業委員会]地域農業の将来計画を協議し、農地法に基づく農地の売買・転用などの事務を執行する行政委員会。委員は市町村長が推薦・募集し、議会の同意を得て任命される。農地が一定面積以上の自治体に設置義務があり、宮城県内では女川町を除く市町村に置かれている。2016年の法改正で業務を分担する農地利用最適化推進委員が新設されたのに伴い、定数が削減された。

「女のくせに」当初は逆風 伊藤恵子会長に聞く  

 女性農業者の地位向上を目指す活動は、地域に根強く残る旧来の意識との闘いでもあった。アグリレディスの発足メンバーで、会長を務める伊藤恵子さん(69)=宮城県美里町農業委員会長=に共同参画への思いを聞いた。

 1999年、南郷町(現美里町)で女性初の農業委員となった。「おなござっぺして(女のくせに)」と言う人もいたが、当時の会長が共同参画の必要性を理解し、背中を押してくれた。少ない女性委員同士で連携しようとアグリレディスの活動に励んだ。

 各市町村を回って女性の登用を求めた際、「おなごは畑やってればいいべ」と言った首長もいた。逆風もある中で、地道に理解を広げて委員を増やしてきた。

 後継者、相続問題など女性から農地関連の相談を受ける機会は多い。耕作放棄地拡大の懸念から、国も市町村ごとに農地集積を行う「人・農地プラン」を進めている。農家の状況を丁寧に把握するためにも女性委員の存在は不可欠だ。女性の農業委員をさらに増やすとともに、土地改良区など関連する機関への女性参画も進めたい。

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