岩沼市長選・課題を探る(上)空港共生 騒音抑え立地を強みに

仙台空港と2007年開通の仙台空港アクセス線

 任期満了に伴う宮城県岩沼市長選が29日告示、6月5日投開票の日程で行われる。東日本大震災からのハード面の復興に区切りがついた一方、仙台圏に位置し、仙台空港が立地する地の利を生かしたまちづくりや防災面に課題も浮上する。ポスト復興の地域づくりを探る。
(岩沼支局・高橋鉄男)

覚書にアクセス線延伸

 仙台空港の南、岩沼市の臨空工業団地と二の倉工業団地は物流系など約220社が立地する。仙台空港インターチェンジ(IC)も近く、トラックがひっきりなしに行き交う。

 ただ、付近にめぼしい観光施設は少なく、空港利用者の車は市内を素通りしていく。

 県が創造的復興とうたう仙台空港の24時間化で、県と市は昨年2月に地域振興策を盛り込んだ覚書を結んだ。「夜間の騒音を受け入れるのは、空港も地域も良くなる関係であればこそ」。地元の矢野目連合町内会長の菅野博さん(73)は語る。

 菅野さんの隣近所は高齢者の1人暮らしが多い。「津波で浸水し、住まなくなった空き家がそのままだよ」と胸を痛める。空港アクセス線沿いが発展する名取市と差を感じてしまう。

 覚書で地区と市が騒音の見返りとして県に求めた地域振興策が、この空港アクセス線の岩沼への延伸だ。

 1997年の県の覚書にも盛り込まれたが、採算性が厳しく「夢物語」に近かった。今回は県が「鉄道需要の創出を図る必要がある」とし、新駅周辺の面整備と一体で鉄道整備に取り組むと約束した。

 候補地は矢野目西産業用地隣の水田55ヘクタールと、県公社の仙台空港フロンティアパーク3・5ヘクタール。後者は、県と市が飲食物販や温浴施設が入るような集客施設「空の駅」(仮称)の整備を想定する。民設民営に向けた4月の意向調査には70社程度から回答があった。

 市の担当者は「小さな市なので面整備には県の力が必要」と言う。ただ名取や仙台の沿岸部に観光施設が増え、期待通り集客が見込めるかは見通せない。

西部の一部で夜間上昇

 24時間化の騒音は市の西部でも懸念される。

 夜間、山側に離陸する際の飛行機の経路は、騒音範囲を減らすため旋回して海に向かわず、西方向に直進して急上昇する。このため西部の一部地区で騒音レベルが上昇してしまう。

 県の対策は集会所の防音工事ぐらい。長岡町内会長の郷内武さん(72)は「県の発展に何ら反対ではないが、騒音は孫子の代まで続く。海に向かって飛び、海から降りる優先滑走路方式をきちんと守ってほしい」と訴える。

 現在の便数は新型コロナウイルス下で1割強減っているが、同方式の順守率は約6割。便数が増えた時「県に対して弱い立場」(関係者)の市がどれだけ物を言えるか。

 「岩沼は仙台空港があって大変だね、と言われては困る」。菅野さん、そして郷内さんも、空港との共生の行方を注視する。

[仙台空港24時間化]県と名取市、岩沼市が昨年2月に覚書を結び、東北で初めて実現した。覚書には(1)運用時間は午前7時半~午後9時半を24時間まで延長できる(2)午後11時~翌朝5時の離着陸は1夜間2回まで(3)騒音対策と地域振興策-を明記。昨年7月には運用時間が午後10時までに延長された。

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