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仙台は霧が多い? 闘将・星野さんも嘆いた夏の風物詩

 「どうして仙台はこんなに霧が多いのかな」。仙台市が本拠地のプロ野球東北楽天を率いた故星野仙一さんは、夏の試合になるとよくこうぼやきました。市内の沿岸部では「イナサ」と呼ばれる南東風とともに霧が立ち込めると大漁や豊作の兆しとされます。仙台は他地域と比べて霧が多い街なのでしょうか? そのメカニズムとは? 素朴な疑問を調べてみました。(編集局コンテンツセンター・藤沢和久、安住健郎)

 霧は空気が冷やされ、湿度が100%近くに達すると発生する。気象庁のデータでは、仙台で霧を観測した日数の平年値(1991~2020年の平均)は年20・0日。東北6県の県庁所在地では山形と並んで最も多い。

 2011~14年シーズンに東北楽天監督だった星野さんは、ダッグアウトに現れると風向きを確かめるのが常だった。

 ホームの日本製紙クリネックススタジアム宮城(当時、14年から楽天Koboスタジアム宮城)ではバックスクリーンの球団旗に目をやる。「ピッチャーとして当然のことや」。左から右の海風か、右から左の山風か。向きによってサインが変わることもある。雨が降りそうなら仕掛けどころが早まる。空模様には細心の注意を払っていた。

 「霧が多い」は12年夏に何度か飛び出した。「不思議だなぁ」と首をかしげた星野さん。チームも7~8月に8連敗を記録し、まさに「五里霧中」の状態にあった。

 星野さんが思わずぼやいてしまった通り、ドーム球場以外が本拠地のプロ野球6球団の中で仙台は確かに霧の日が多い。2位の横浜は4・0日、3位の広島は3・3日にとどまる。

 パ・リーグ史上、濃霧コールドゲームとなった4回中2回は仙台だ。直近の2020年7月21日の東北楽天―オリックス戦は、鳥取県米子市であった00年5月9日のオリックス―近鉄戦以来20年ぶりだった。

濃霧コールドゲームとなった2020年7月21日の東北楽天―オリックス戦。7回裏、楽天攻撃中に霧が濃くなってきた=午後9時ごろ
8回表、楽天守備中に一時中断した=午後9時15分ごろ
8回表、楽天守備中にコールドゲームとなった=午後9時35分ごろ

三陸沿岸の親潮が影響

 霧が多い理由として、仙台管区気象台は三陸沿岸の親潮の影響を挙げる。南から吹き込む暖かく湿った空気が親潮の冷たい海面によって冷やされると、空気中の水蒸気が小さな水滴に変わる。こうして発生した海霧(移流霧)が風に流されて、陸上に入り込む。

 東日本大震災で大きな被害を受けた仙台市若林区荒浜地区の住民は、南東から吹き寄せる湿った風をイナサと呼んだ。イナサは海や田んぼに張られた水で冷やされ、一帯に霧をもたらした。

 気象台天気相談所は「海水温と気温の差が大きいこれからの時季は霧が発生しやすい」と話す。仙台の霧の観測日数は月別では7月が5・4日で最も多い。次いで6月が4・0日、5月が2・7日、8月が2・6日と5~8月に集中し、10~3月は1日以下。夏場は高気圧が三陸沖を抜けるため、海風になりやすいことも影響している。

 もっとも、この時季は雨も多い。雨の日にかかるもやと霧はどう区別すればいいのだろう。気象庁は水平の見通し距離1キロ未満を基準にする。気象台では1キロ先のビルなど目標物が見えるかどうかで判断しているという。

 ちなみに各都道府県を代表する全国55地点で最も霧の日が多いのは釧路(北海道)の96・9日。2位が帯広(同)の50・6日、3位が銚子(千葉県)の40・2日と続く。例外はあるものの西日本より東日本で多い傾向にある。

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