河北春秋(6/21):吉田茂元首相の側近として活躍した白洲次郎…

 吉田茂元首相の側近として活躍した白洲次郎は晩年、ゴルフクラブの運営に精力を注いだ。よほど遅延プレーに腹が立ったのか、ある時、「PLAY FAST」と書いたTシャツを作らせた。意味は「さっさと、やれ」。口癖だった。戦後日本の政財界を駆け抜けた白洲らしいエピソードだ▼素早く、手軽に。ゴルフに限らず現代社会は「ファスト」にあふれている。フードやファッションに加え、本編を要約したファスト映画まで登場する始末。娯楽さえもスピード社会にのみ込まれた▼気ぜわしい毎日に疲れ、時には歩調を落としたくもなる。本来、生活リズムは人それぞれのはず。人生を味わい、日々の出来事をかみしめる喜びだって大事にしたい。社会が加速度を増す一方では、取り残される人も出かねない▼せっかちだったとされる白洲は、実はスローライフの実践者。30代で農村に移り、農業に励んだ。ゴルフのプレーを急がせたのは、性格だけが理由ではあるまい。社会的立場のあるメンバーが周囲の迷惑を顧みないのが許せなかったのだろう▼ファストには、「ぐらつかない」の意味もある。ここはひとつ、新たなファスト社会を目指してはどうか。周囲を思いやり、多様な生き方を認め合う。そんな揺るがぬ信念を共有するような。(2022・6・21)

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