物価高で「貧困世帯」に近づく 双子の子育て、かさむ出費 <参院選・暮らしどこへ>

子ども食堂で弁当を受け取る伊東さん(手前)。家計の厳しさは増す一方だ=10日、仙台市太白区の「おりざの家」

 参院選(7月10日投開票)が始まった。地域経済は新型コロナウイルス禍でさらに傷つき、物価高が生活苦に追い打ちをかける。令和の時代に深まる将来不安。声なき声は政治に届くのか。

「お金があれば」

 「仙台には何でもあるよ」。引っ越す前に聞かされていた通り、モノやサービスがあふれる暮らしやすい街だ。ただし「お金があれば」の条件が付く。

 主婦伊東玲奈さん(36)=仮名=は7年前、美容師の夫(38)の仕事の都合で長女(10)と共に郡山市から仙台市太白区に移り住んだ。その後に授かった双子の長男と次女は今3歳だ。

 夫の月給から、家族5人の食費と家賃、駐車場代、光熱水費、スマートフォン代、長男と次女のおむつ代などを差し引けば、ほとんど残らない。カードローンで赤字を埋め合わせる月が増えた。

 「口座引き落としができません」という郵便物も時々届くようになった。「ぜいたくはしていないのに、以前より余裕がない」。物価高の影響も感じる。

 双子は子育ての喜びだけでなく、出費も2倍だ。2人に新品の服やおもちゃは買ってあげられない。スマホのフリーマーケットアプリを駆使してしのぐ。

 同じように男女の双子を持つ親が、同じデザインで色違いのお下がりを出品するのを狙う。新型コロナウイルスの流行後は、滑り台など中古の屋内遊具も格安で手に入れた。

社会全体に疑問

 夫は市内の美容室で「雇われ店長」の身。朝8時出勤、深夜帰宅で、休みは週1日のみだ。「自分もそろそろ働かないと」。その心を「子どもの預け先」という難題がくじく。

 「同じ園に入るのは、よほど運が良い場合。2人とも入れない可能性だってある」。相談した市の保育園担当者に告げられた。小規模保育施設が利用できるのも、多胎世帯向けの一時預かりや支援職員の派遣も2歳まで。「3歳の壁」だ。

 入園の可否は、保育の必要性を数値化した点数で決まる。仙台市では双子加点の措置はない。

 かまってほしい盛りの長男と次女は歩いていても始終、話しかけてくる。道で擦れ違う人に時々、うるさそうに舌打ちされる。「小さな子連れは歓迎されていないのかも」と思う。

 長女にも申し訳ない。ピアノ教室や学習塾などの習い事を掛け持ちする同級生に、引け目を覚えさせていないか。「格差って、もうこの年齢から始まるんだな」と痛感する。

 最近は市内の子ども食堂で週1回、弁当をもらう。子どもは無料、大人は1個400円。少し家計の足しになる。自分たちは貧困世帯の定義には、たぶん該当しない。ただ、実態は限りなくそれに近い。

 政府はこども家庭庁を創設し「こどもまんなか」社会を実現するとうたう。言われなくても、子どもの問題は常にど真ん中にある。

 「社会全体が『子は宝』と思ってくれるのだろうか」。正直、疑問に思う。
(報道部・武田俊郎)

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る