河北春秋(6/28):「おれ、このホタルになって帰ってくるよ」…

 「おれ、このホタルになって帰ってくるよ」。太平洋戦争の末期。ゲンジボタルが舞う夜に、20歳の若者はそう言い残し、翌日出撃した▼陸軍特攻基地が置かれた鹿児島県知覧町(現南九州市)。食堂を営み、「特攻の母」と慕われた故鳥浜トメさんは息が止まるかと思ったという。出撃の夜、1匹のホタルが光の尾を引きながら、すーっと店に入ってきた。『ホタル帰る 特攻隊員と母トメと娘礼子』につづられた切ないエピソード。「ホタルになって帰ってきた」。涙があふれた▼1945年3月から6月にかけ、知覧から特攻隊四百数十機が爆弾を抱え沖縄へ飛び立った(知覧特攻平和会館編『いつまでも、いつまでもお元気で』)。玉音放送は、わずか数カ月後。鳥浜さんは膝からくずおれた。「あの子たちの命はなんだったのか」▼沖縄戦の終結から77年。ロシアによるウクライナ侵攻は4カ月が過ぎた。戦火は消えない。「こわいをしって、へいわがわかった」。沖縄慰霊の日の23日、小学2年の徳元穂菜(ほのな)さんが朗読した平和の詩が胸に響く。「あたたかい」のが平和。なくさないように、「ポケットにいれてもっておく」▼ポケットいっぱいの平和を守りたい。ホタルが飛び交う季節。亡き人の面影を重ねつつ、希望の光を見いだしたい。(2022・6・28)

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