減らない自死 「自己責任」にしないで <参院選・暮らしどこへ>

あしなが育英会の大学奨学生らが貧困家庭への支援を呼びかけた募金活動=5月14日、青森市

 「ひとり親で貧しい子」「自死遺児はかわいそう」。そうした言葉に何度も傷ついてきた。

 青森市の工藤春香さん(22)=仮名=は6歳の時、30代後半の父を自死で失った。大人たちからは同情され、小中高の同級生からはいじめられた。

 小さな町で書店を営んでいた父は、休日には滝を見に連れて行ってくれたり、一緒にバッタを捕まえて遊んでくれたりした。優しい父親像が記憶に残る。

 自ら命を絶った理由は分からない。ただ、仕事で悩みを抱え、うつ気味だったと後から聞いた。

 母は保険会社に転職し、家計を支えるため必死で働いた。授業参観に母の姿はなかった。小学1年の参観日、周りは父親、母親と仲良くクリスマスの飾りを作る中、泣きながら担任と作業した。

 「どうして私たちを置いて逝ってしまったの」。寂しさと同時に、父への怒りが湧くときもあった。

 自死が家族に残す影響は身に染みている。辛いことが重なった際、自分の脳裏にも、ふと「自死」という選択肢がちらついた。「父と同じ道をたどったら、残された母はどうなるか…」。痛みが分かるからこそ、何とか踏みとどまった。

 新型コロナウイルス禍で孤独・孤立の問題が深刻化し、経済状況は悪化した。経済的、社会的に弱い立場の人ほど影響は大きい。

 青森県の自殺者が増えている。厚生労働省によると、2021年は284人で、自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は前年比4・1ポイント増の23・4。初の全国ワーストになった。

 東北各県の自殺率は山形20・1、秋田18・8、福島18・7、宮城17・3と、いずれの県も全国平均16・5を上回る。岩手は16・2だった。

 自殺対策基本法が施行されて今年で16年。工藤さんは「いくら国の対策で相談窓口が増えても、周囲の意識が変わらないと自死は減らない」と言う。

 長年、自殺率がワーストだった秋田県は官民を挙げ、県民の意識改革を含め、自殺予防対策を推進。自殺率を減らしてきた。

 だが、20年にわたり、自殺問題に取り組む秋田市のNPO法人「蜘蛛(くも)の糸」代表の佐藤久男さん(78)は「この先、コロナ禍の影響で自殺者は増える」と警鐘を鳴らす。

 これまでの経験を踏まえ、行政主導ではなく、民間も連携して県民運動とする重要性を力説する。「われわれ一人一人の問題だと意識を変え、地道な支援を続けるほかない」

 工藤さんは、自死や病気などで親を亡くした子どもたちを支える「あしなが育英会」(東京)の活動に参加。募金で街頭に立ち、社会に訴える。

 「遺児であることが、差別やハラスメントの原因であってはいけない。自死は決して『自己責任』ではない」

 (青森総局・今愛理香)

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