資源高で増す経費 膨らむ個人事業主の持ち出し <参院選・暮らしどこへ>

材料の見積書を確かめる菓子店主。いずれも1~2割高の金額が記されていた=6月下旬(画像の一部を加工しています)

 カーラジオが「今年一番の暑さ。熱中症に注意を」と呼びかける。意地でもエアコンはつけない。これで燃費が良くなるならと、窓を全開にする。

 個人で運送業を営む仙台市の小田有貴さん(仮名、50代)は最近、以前に増して心身の負担を感じている。

 東北のガソリン価格は3月、1リットル173円と13年半ぶりの高値となった。一昔前は月3万円で済んだ燃料代も倍の6万円に膨らんだ。オイルもタイヤも値上げが止まらない。個人事業主は経費が全て持ち出しだ。「走れば走るほど損した気になる」

 新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で、宅配業界は好景気だと思われがちだが、実態は違う。運送業は車1台で始められ、参入障壁は低い。その分、パワーバランスは荷主や元請けに傾き「労働者の買いたたき」が横行する。増えた経費分など見てくれない。手取りは年々減っている。

 世界的な通販大手は管理も厳しい。人工知能(AI)が届け先の順番まで指定してくる。だが、機械的に算定された行程は、地域を知り尽くした身には、むしろ遠回り。「燃費至上主義者」はいら立ちを隠し、道を間違ったふりをして、自身で開拓した最短ルートを回る。

 ルールを破れば指摘される。非効率さに疑問を持ち、抗議した。元請け先の言葉は「文句あるなら、やめれば」。年齢も年齢だ。資源高で増した経費は、古タイヤをだましだまし使ってしのぐしか、策がないと思っている。

 カーラジオから選挙のニュースが流れると反射的に番組を変える。「政治で生活が良くなったことがない。休みにまで運転して投票所に行きたくない」

 A4判の一枚紙が非情な現実を突き付ける。

 宮城県内で菓子店を営む松田孝太さん(48)=仮名=は、業者から送られてきた7月以降の原材料の見積書を前に「また高くなった」とひとりごちた。

 小麦、バター、加工油脂、包装紙…。あらゆる資材価格が1~2割上がった。値上げラッシュとため息は止まりそうにない。

 今春、商品の値段を恐る恐る1割上げた。顔なじみの客は「上げたんだね」と一言。胸にぐさっと刺さったが、相手の立場も分かる。顧客の多くはコメ農家だ。自分と同様、肥料など資材の値上げに苦しんでいる。「この海を泳ぎ切る方法って、あるんだろうか」

 資源高で失った分を少しでも回収しようと、高い手数料を払って大手ネットサイトで焼き菓子の販売を始めた。反応はあるが、手応えを感じない。

 政府は「コロナ対応」と称し膨大な予算を組み続ける。一経営者には「あり得ない放漫経営。自分の金じゃないからできる」と映る。

 投票に行くかどうか迷っている。「政治家が皆、宇宙人に見えてきた。こっちが何を言っても伝わらないし、彼らの言うことも響かなくなってきちゃった」
(報道部・土屋聡史)

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