石巻の夏、復活 「川開き祭り」あす開幕 見せます心意気
石巻市最大のイベント「第99回石巻川開き祭り」(実行委員会主催)が6、7の両日、市中心部で3年ぶりに開かれる。新型コロナウイルス感染拡大で主要行事の中止が続いたが、参加団体を減らすなど規模を縮小して復活にこぎ着けた。感染対策の徹底を図りながら、街に活気と熱気を取り戻そうと市民が躍動する。
今回はより多くの市民らが参加できるよう、東日本大震災以降7月31日、8月1日に固定されてきた開催日を8月の第1土日に変更。花火大会は打ち上げ場所を北上川の石巻大橋下流に移す。
孫兵衛船競漕(きょうそう)は北上川の開北橋下流にコースを設ける。出場団体は孫兵衛船が25チーム、女子のミニ孫兵衛船は8チームと前回2019年の約半数となったが、実力チームがそろう。400メートルのレースに全力を注ぎ、栄冠を目指す。
陸上行事の花形である小学生鼓笛隊パレードは、観覧者の混雑を避けるため午前・午後の2部制にした。市内15校が商店街を練り歩き、元気いっぱいの演奏を届ける。
花火大会は供養花火との2部構成で、約6000発を打ち上げる。震災復興事業で今年3月に完成した北上川堤防に3カ所の観覧席を設け、市民や観光客を迎える。
祭りは来年、節目の100回目を迎える。時代に対応しながら、力を結集し伝統を未来へつなぐ。
石巻川開祭実行委員会・青木八州会長「開催に向け全力で準備」
昨年、一昨年と残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から主要行事の開催を中止しましたが、今年の石巻川開き祭りでは花火大会や陸上パレード、孫兵衛船競漕などの主要行事を3年ぶりに開催させていただきます。
この川開き祭りは、北上川の改修工事を行い石巻発展の基礎を築いた川村孫兵衛翁への報恩感謝として、1916(大正5)年に始まった由緒ある祭りです。水難事故や東日本大震災で亡くなられた方への慰霊祭の他、北上川の石巻大橋下流では約6000発の花火を打ち上げる花火大会、市内商店街では各種パレード、開北橋下流では白熱の孫兵衛船競漕を繰り広げます。
これらの行事に参加される方々に感染対策をお願いするなど、開催に向け実行委員会一同全力で準備をしてまいりました。そこで、ご観覧される方にも幾つかのお願いがございます。
「参加事前登録フォーム」を使用しての情報登録の他、祭り当日には会場内に手指消毒や検温などをお願いするスペースを設置しますのでご活用いただければと思います。また、会場内での食べ歩きや大声での会話、ご声援をお控えくださいますようお願い申し上げます。
皆さまには今まで以上のご理解とご支援、ご協力を重ねてお願い申し上げます。
市民ら、祭り盛り上げ
3年ぶりの石巻川開き祭りを盛り上げようと、主要行事に参加する市民らも意欲を燃やしている。新型コロナウイルス感染対策として孫兵衛船競漕(きょうそう)や陸上パレードは団体数を減らすなど規模を縮小。参加者同士の距離を保つなど制限がある中での開催となるが、全力のパフォーマンスで石巻を活気づける。
<孫兵衛船競漕>
■石巻広域消防本部、連覇目指す
前回2019年の孫兵衛船競漕で11年ぶりの優勝を果たした石巻広域消防本部の職員有志チームは、3年ぶりの競漕で2連覇を目指す。
20代から40代までの職員が出場する。前回から半分近くメンバーが入れ替わったが、小林大輔監督(42)はチームについて「すごく仕上がっている」と話す。
前回の優勝には入念な準備を要した。消防チーム伝統のこぎ方を見直し、全員で話し合って研究。若手やボート経験者の意見も取り入れ、技術を磨いた。今回も研究を深める。
どの参加チームも練習回数は制限があるが、勤務の都合で全員そろって練習する機会がなかなか取れなかった。それでも最後の練習日となった7月29日には各職場で休みを取るなどして全体練習を実施した。競漕に懸ける思いは強い。
初参加の河北消防署員秋山大成さん(21)は「想像以上に技術と体力が要る。新人として力と根性を発揮したい」と話した。
2連覇が目標だが、小林監督は「やっとこげるので楽しみ。3年分の思いをオールに乗せ、参加者だけでなく観客の皆さん全体で楽しめればいい」と述べた。
<大漁踊り>
■石巻市職員厚生会、そろいの浴衣で盛り上げ
石巻市職員厚生会は伝統の大漁踊りに参加する。市職員から有志を募り、3年ぶりの祭りを盛り上げようと市役所本庁舎や総合支所、市立保育所などに勤める約60人が集まった。当日はそろいの青い浴衣や法被姿で踊りを披露し、花を添える。
参加者は若手が中心で、今回が初めての職員も多い。終業後の午後6時から2回練習会を開き、日本舞踊菊川流の菊川喜三則さんを招いて特訓。「帆が上がるように」「船をこいで」と振り付けの指導を受け、「大漁唄(うた)い込み」の曲に合わせて何度も練習した。
他自治体からの応援職員も加わる。東京都職員で今年4月から下水道建設課で働く小形浩二郎さん(50)は「石巻に来て初めての祭り。一緒に盛り上げたい」と意気込む。
今回は花火大会が初日になり、大漁踊りが祭りを締めくくる。参加団体は前回2019年から6減って8団体になるが、市民の心意気を見せようと張り切る。
約20年ぶりに参加する人事課の柴田直人さん(46)は「大漁踊りは地域の一体感が感じられる大切な行事。石巻の夏を取り戻したと思えるような楽しい祭りになればいい」と願う。
<中心街巡行>
■石巻みこしの会、元気発信
威勢のいいかけ声とともに縄張神社のみこし渡御を行い、祭りを盛り上げてきた石巻みこしの会。今年は感染対策を徹底した「ウィズコロナ仕様」で練り歩く。
柳橋哲也代表(44)は「祭りの開催が決まり、感染症対策のルールを守ってどんなみこしができるか考えてきた。盛り上げに一役買いたい」と意気込む。
祭りのガイドラインに従い、担ぎ手同士の距離を1メートル以上確保するため、車輪付きの台車にみこしを載せて練り歩くスタイルに変更。「セイヤー」といったかけ声は出さず、祭りばやしの音源と共に巡行する。
例年「男みこし」と「女みこし」の2基態勢だったが、今回は1基のみにした。一般参加者の募集はせず、20人ほどのメンバーで練り歩く。
本番に向けて会合を重ね、2年以上倉庫で眠っていたみこしを磨いたり、台車を試作したりと準備は整った。制約下でのみこし渡御になるが、コロナ禍前と変わらず観衆に元気を届ける。
柳橋代表は「自粛続きで暗い話題が多かった。みこしで石巻を盛り上げ、祭りを一緒に楽しみたい」と力を込める。
主要な行事
■■ 水上行事 ■■
孫兵衛船競漕(きょうそう)は北上川の開北橋下流に設けた400メートルコースで行う。孫兵衛船は25チーム、女性だけで構成するミニ孫兵衛は8チームが出場。6日に予選レース、7日に決勝や順位決定戦などがある。
■■ 陸上行事 ■■
両日とも中心市街地で実施する。6日の縄張神社奉納大縄引き大会には、一般の部に12チーム、高校生の部に7チームがエントリーした。一皇子宮神輿(みこし)や8団体が参加するアクアカーニバルもある。
7日の小学校鼓笛隊パレードは「密」を避けるため午前と午後の2部制を取る。15校が参加し、石巻小から立町大通りまでのパレードコースで演奏を披露。他にも沖縄の伝統芸能「エイサー」や縄張神社みこし、桃生地区の「はねこ踊り」、石巻中吹奏楽部などが花を添える。8団体による大漁踊りが祭りのフィナーレを飾る。
両日とも石巻商工会議所に「お祭り広場」を開設。ダンスや音楽のステージと飲食・縁日ブースなどがある。
■■ 祭典・煙火 ■■
6日は川村孫兵衛翁報恩供養祭や東日本大震災慰霊祭、午後6時半からは北上川の内海橋上流で流灯といった供養行事がある。花火大会は午後7時半開始。石巻大橋下流に設けた台船から約6000発を打ち上げる。第1部(15分間)は震災犠牲者の供養花火として「いのり」をテーマに構成。第2部は復興や新型コロナ収束を願い、華やかなスターマインなどで夜空を彩る。
感染対策に協力を
実行委員会は来場者にマスクの着用や手指の消毒、参加事前登録といった感染対策への協力を呼びかけている。
立町大通りなど市街地3カ所に、検温や手指消毒ができるゲートを設置する。スマートフォンなどからアクセスできるウェブ版の「参加事前登録フォーム」を用意。名前や連絡先、観覧プログラムなどの登録に協力を求める。当日は各ゲートに手書き用の「登録用紙」も置く。
露店などでの飲食物販売は認めるが、歩きながらの飲食は禁止。いしのまき元気いちば(石巻市中央2丁目)隣接のバスロータリーに飲食スペースを設け、利用を促す。パレードや花火観覧時の飲食も、熱中症対策の水分補給を除き控えるよう求める。