旧統一教会「占い名目で声がけ」「個人情報のカルテ共有」 仙台出身・元信者のルポライター多田文明さんに聞く

旧統一教会の内情を語る多田氏

 安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」を巡る数々の問題が噴出している。仙台市出身の元信者で、悪質商法などに詳しいルポライターの多田文明さん(57)が在籍当時の実態を語った。(聞き手は報道部・岩田裕貴)

教義刷り込まれた

 入信のきっかけは日本大4年だった1987年、友人から誘われたバレーボールだった。終わった後に自己啓発セミナーを紹介され「いま世界で一番読まれている本は聖書。就職にも有利だよ」と勧誘された。「入会料を安くする」ともささやかれ、「お得だな」と思って入会してしまった。

 東京都内の「ビデオセンター」と呼ばれるサロンのような場所に週1、2回通い、ビデオを見た。聖書の勉強のつもりだったが、視聴するビデオの内容は全て旧統一教会の教義だったと後に知った。カウンセラーとの面談などを通して教義が少しずつ刷り込まれ、旧統一教会だと正体を明かされても抜けられないほど洗脳された。

 信者になってからは、まず伝道活動に精を出した。平日の夜は与えられたリストに沿って電話で勧誘し、土日は街頭に立った。

 街頭に1人でいる女性に「手相を勉強しています」と声をかけ、相手の悩みを指摘するとうまくいった。「2千円で姓名判断の先生が見てくれるから」と誘い、ビデオセンターに連れて行った。占いは、個人情報を知るには一番良い方法だった。

仙台はノルマ緩い

 神様の元にお金を返すための「万物復帰」と呼ばれる活動もした。ボランティアと偽り、住宅を1軒1軒回った。「車いすを買うため」とうそを言って、安価で仕入れたハンカチや靴下を高値で売ったりした。

 入信から数年後には、2週間にわたり行われるセミナーで講師を務めるようになった。「これまで学んできた教義を説き明かしたのは(旧統一教会創設者の)文鮮明氏です」と種明かし役を担った。

 ビデオセンターに1~2カ月通った人たちは2日間のセミナーに参加後、2週間セミナーに案内される。合同結婚式が盛んに報道されている頃だったが、正体を明かしても脱会する人はほとんどいなかった。2週間セミナーの参加者は、すぐに次の4日間セミナーに向かい、その後、信者になった。

 教団で最も恐ろしいのは情報収集力だ。参加者の個人情報を記した膨大なカルテを教団内で共有し、脱会できないよう一人一人に常に対策が講じられていた。

 東京で6~7年にわたり活動した後、文鮮明氏の教えに基づき、地元仙台で家族への伝道を目指すことになった。東京での熱心な活動と違い、仙台はノルマが緩い。しばらくは仙台の教会に通い、仕事して献金するという生活を続けた。

 仙台時代にバイクで車にはねられる事故に遭った。その時に「これは霊に打たれた(霊の仕業だ)」と思い、教団から科せられたノルマをもっとこなさなければいけないと感じた。

 そこから仙台の教会により深く入り込んだ。若手の信者たちは青葉区一番町のアーケード街などで伝道活動に精を出した。

教義と現実違った

 脱会できたのは家族のおかげだ。ある日、実家に帰ると、家族や親族が勢ぞろいしていた。「伝道の機会になる」くらいの気持ちだったが、様子が違った。

 「違法行為に手を染めている」「人様の家庭を崩壊させている」と泣かれた。叔父は「お前のために仕事を辞めた」と言い、話を聞いてくれた。

 教義を学べば皆が幸せになるはずなのに、現実は全然違う。こんなことを続けても、教団が目指す「神の国」はできないと感じ、心に亀裂が入った。

 すると、教団内で覚えた違和感を思い出した。信者になったばかりの頃、先輩が「たくさんの高齢者につぼを売って、全財産を出させた。白いご飯と梅干しでしか生活していないみたいだ。こんなつらいことさせていいのだろうか」と漏らした。

 当時は「何か深い意味があるのかな」とぼんやり思った程度だったが、心に亀裂が入った後、苦しんでいた人たちの顔が頭に浮かんだ。

 家族は教義を内緒で勉強していたようで、頭ごなしに否定せず、何時間も寄り添ってくれた。家族の支えで、教義に心が戻ってしまうフラッシュバックも乗り越え、脱会できた。

晋太郎氏の首相就任祈願

 99年、詐欺的な勧誘で入信させられた損害賠償を求めて教団を提訴した。一、二審判決は教団が合同結婚式に参加を強要したことを違法と認定し、2004年に判決が確定した。

 元信者であることを積極的に公にし始めたのは安倍氏の銃撃事件後だ。事件はとてもショックだった。信者2世が苦しむ状況が今も続いていることに大変驚いた。信者の家族が暴走することはあるが「殺人にまで至るのか」と。

 教会を恐れて声を上げられない人もいると思い、まずは自分が旗振り役となって声を上げやすい環境をつくろうと思った。

 政治家と教会の結び付きが次々と明らかになっているが、在籍当時によく聞いたのは、安倍氏の父晋太郎氏の話だった。信者が一番祈っていたのは晋太郎氏が中曽根康弘首相の後継になることだった。

 だが、中曽根氏は竹下登自民党幹事長(当時)を後継指名した。数年後に晋太郎氏が亡くなった際、信者は皆がっかりした。

 現在、最も心配なのは信者2世のことだ。宗教を選ぶ自由がない。「あなたは神の子」と言われて育ち、信じるしかない状況だ。

 今は政治家とのつながりばかりが注目されるが、教団の問題点をきちんと糾弾した上で2世や元信者、今まさに脱会を考え始めた人たちの受け皿について、社会全体で考えてほしい。

[ただ・ふみあき氏] 1965年生まれ。日本大法学部卒。87年から約10年間、旧統一教会に信者として在籍。脱会後、悪質商法を取材し雑誌で連載。2017、18年には消費者庁の「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」委員を務めた。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る