旧統一教会、被害救済 政府の対応が緩慢すぎる 社説(9/3)

 世論に突き上げられて、やむなく対処している感が拭えない。安倍晋三元首相の銃撃事件でえぐり出された社会の暗部に光を当て、課題の解消に向けた政府の対応があまりにもお粗末だ。

 殺人容疑で逮捕された山上徹也容疑者(41)の供述により世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家の結び付きがクローズアップされた。

 岸田文雄首相は安倍氏の国葬を早々に決めた一方、自民党と教団の「絶縁」を宣言したのは事件から1カ月半以上もたってからだ。

 教団は霊感商法や高額の献金で蓄財し、各地で家庭崩壊を引き起こした。深刻な問題があらわになったが、被害救済を図る動きも緩慢だ。

 政府は先月、法務省、警察庁、消費者庁などによる関係省庁連絡会議を設けた。初会合で打ち出したのは、9月初旬から約1カ月間を被害相談の「集中強化期間」と位置付けることだけだった。

 相談は全国の消費生活センターや法務省の人権相談窓口といった公的機関のほか、弁護士グループが長年受け付けている。明らかに後付けで、小手先の取り組みだ。金銭被害の解決は裁判手続きが必要になることが多いため、弁護士につなぐしかない。早急に必要なのは救済の仕組みだ。

 除霊などを理由につぼや数珠などを不当な高値で売りつける霊感商法は、1980年代から社会問題化した。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、被害は87年~2021年に3万件超、総額は約1237億円に上る。

 警視庁は09年、都内の印鑑販売会社の社長ら7人を特定商取引法違反容疑で逮捕したものの、教団本部に捜査を伸ばせなかった。18年の消費者契約法改正で不当な勧誘による契約を取り消せるケースに霊感商法で不安をあおられた例を追加したが、被害は後を絶たない。

 山上容疑者は犯行動機について、母親が入信後に破産するほど多額の献金をし、家庭が崩壊したため、教団に恨みを抱き、友好団体とつながりのあった安倍氏を狙ったという趣旨の供述をした。

 教団側は政治家にすり寄り、接点を得た政治家の知名度を自らの社会的信用度アップに使い、活動を広げていた。

 教団の実態が明らかになったのは40年も前だ。破綻に追い込む団体の活動を放置せず、被害拡大を防げば、銃撃事件は起きなかったはずだ。

 消費者庁は関係省庁連絡会議とは別に、霊感商法の被害対応を検証する検討会を新設した。物品を介さない金のやりとりを不法行為と認定できるかが論点だが、いまさらの議論だ。長年の不作為が被害を広げたのは明白だ。

 家族の不和と自暴自棄。不幸の連鎖を断ち切れなかった責任は政治にもある。早期に被害の救済と未然防止策を構築することが絶縁宣言の実効性を裏付けることになろう。

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