(373)匍匐(ほふく)して花野に斃(たお)れ帰らざる/井口 時男(1953年~)
句集『その前夜』より。秋の草花が咲き乱れる花野は平和の象徴に思える。しかし戦争はその花野を過酷な戦場へと一変させる。匍匐前進する兵士たち。生死の境にいる兵には、草花は身を隠す物でしかない。そして銃撃…
関連リンク
- ・(372)天高し高天原の記紀神話/大高 霧海(1934年~)
- ・(371)弟に小(ち)さきながらも初秋刀魚/野内 はな(2006年~)
- ・(370)花野踏む間も幼子に死は育つ/春日 石疼(1954年~)
- ・(369)いわし雲いわし無数が空に飢ゑ/宮坂 静生(1937年~)
- ・(368)とまれみよ遮断機の上に銀河/網谷 菜桜(2004年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。