(374)筆硯(ひっけん)に多少のちりも良夜かな/飯田蛇笏(1885~1962年)

 今日は旧暦8月15日、中秋の名月。月の明るい夜を良夜というが、特に名月の晩のイメージが強い。山梨の人、蛇笏が用いたのは雨畑硯(すずり)だろうが、宮城県の雄勝硯も濡(ぬ)らすと漆黒の硯面に石紋が銀河のようにうっすら浮き上がる。月に一献傾けながら、さていい気持ちで書き物でもしようか。当然月の夜は星はほとんど見えないが、硯に水を垂らすと、そこには小さな銀河。浮かんでいる多少の塵(ちり)は星のようだ。ゆったりとした時間が流れる一句。『飯田蛇笏全句集』より。
(浅川芳直)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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