着るだけで身体機能UP? 介護士に好評、シャツ販売15万着 仙台の企業「怪しい」はねのけ躍進<せんだい進行形>
仙台に本社を置く企業が開発・製造した「身体機能改善」をうたうTシャツが売れている。患者の抱き起こしなど体に負担の大きい動作を繰り返す介護士らの間で「動きが楽になる」と評判となり、発売2年足らずで累計15万着を突破。通販サイトの評価欄には「身体が軽くなった」「驚愕(きょうがく)の発明品」との書き込みが相次ぐ。一方で「効果なし」との酷評があるのも事実。仙台発の話題のシャツを腰痛持ちの記者(50)が着て確かめてみた。(報道部・大泉大介)

中国武術に着想
商品名は「リライブ」。シャツやパンツ、スパッツなどをラインアップし、豊富なサイズ・色展開で老若男女に対応する。価格はTシャツ7700円、スパッツ1万3200円などだ。
開発・製造は泉区長命ケ丘にある「身体機能研究所」、販売は同じビルに入る「リライブ販売」が担う。スタッフは両社計12人。どちらも青葉区の会社経営佐々木貴史さん(61)が代表を務める。
商品説明には「身に着けるだけで身体の軸がしっかりして柔軟性が増す」「たくさんの筋肉が協力して無理なく大きな力を出せる」とある。
実際商品を手に取ると、生地や縫製に変哲はない。特徴はTシャツの場合、背中側は肩甲骨の上下左右、腹側はへその左右に、特殊な模様がプリントされていること。パンツだと太ももと尻側の両面左右に同じプリントが入っている。

佐々木さんは「気功の考え方に、痛みの緩和や動きのサポートに効果のあるテーピングの手法を応用した」と説明する。幼い頃からの悩みだった虚弱体質を改善しようと2017年に同社を設立。長年親しんできた中国武術にヒントを得て起業家仲間と試作を重ね、商品化にこぎ着けた。
「プリント部分のインクにはトルマリンなど、マイナスイオンなどを発生する複数の鉱石が混ぜてある。それが経絡や筋肉を刺激する。はり・きゅうでやっていることを衣服に取り入れた」。ベースのシャツやパンツは完成品を輸入。国内3工場にプリントを委託し、製品に仕上げている。
同社は着用前後の変化を第三者機関の実験データとして公表している。それによると柔軟性を見る前屈は約6センチ改善、重いものを持ち上げる背筋力は38%アップ。「着るだけで身体能力を向上させる世界初の技術」(佐々木さん)でリライブは19年7月、アパレル製品としては異例の特許を取得。意匠と商標も登録した。
当初は鳴かず飛ばず
ただ20年11月に売り出すも、当初は鳴かず飛ばずだった。潮目が変わったのは21年2月、ビジネスプランのプレゼンをして出資を募るユーチューブの番組「令和の虎」に佐々木さんが出演。「虎」と呼ばれる経営者5人全員から100万円ずつの出資を取り付ける「快挙」が公開されると、直後から注文が殺到し、1週間で8000着に達した。
あとは右肩上がり。インターネット通販アマゾンの医療衛生着分野や、楽天市場の介護用品部門などで販売ランキング1位を獲得。仕事着として取り入れる介護職員は全国に広がり、最近は戦績や記録のアップを目指すアスリートからの引き合いが増え、今秋にはゴルフウエアも売り出した。
返品、返金に対応
一方で通販サイトの評価には「効果が感じられない」といった厳しい声があるのも確か。アマゾンの場合、5点満点の評価でリライブシャツは3・9。5点満点の割合が48%の一方で、最低の1点は11%ある。
佐々木さんは「マイナスイオンとか経絡とか、今の科学では『怪しい』『うさんくさい』とされてしまう領域。プラシーボ(偽薬)効果と疑う人がいるのも分かるし、効かないという人がいるのも現実」と認める。
その上で、初回購入時に限り1カ月以内の返品と返金を受け付けているとし、「送料は負担いただくが、不要ならば遠慮なく返品いただきたい。それが物を作って売る者ができる誠意」と語る。実際の返品率は2%と明らかにしている。

前屈、指先が地面にぺたり 重い物も楽々 記者が試着
「説明だけでは、うさんくさいですよね。なので、とにかく着てみてください」。佐々木さんの言葉に従って記者も体感した。着用感は普通のTシャツと一緒。締め付けなどは皆無だ。
テストしたのは前屈などの柔軟性と、体の前後で組んだ両手に重い荷物を乗せるように佐々木さんに下方に押されて耐えられるかの体感。職業柄、疑いやすくだまされない性分と思っているが…。実験の度、口から出たのは「すごい!」「マジか!」ばかりだった。
着用前、手の指先がつま先に触れるのがやっとだった前屈は、着ると指先が地面にぺたり。重さに耐える実験も、最初は腰や腹に大きな負荷を感じたが、着ると自分がマッチョになったと感じるほど軽く感じられた。これを「効果」と言い切る自信はないが、「違い」は確かに感じた。
佐々木さんはリライブの開発にあたり、介護士だった妹のことが念頭にあった。一日に何度もお年寄りを抱き起こしたり、ベッドから車いすに移動させたり、重労働に体が悲鳴を上げ、志半ばで退職したという。
「高齢化社会で介護職の重要性は増すばかり。多くの人を健康にして世界に貢献したい」と佐々木さん。メカニズムなどをより平易に説明できるように、日本薬科大や福井大などと共同研究を進めている。
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