(475)やあといふ朝日へおうと冬の海/矢島渚男(1935年~)
冬の海、水平線に太陽が顔を出した。光の帯が海を染め上げていく。「やあ」という太陽、「おう」と答える海。この男言葉の掛け合いは、まさに茫漠(ぼうばく)とした冬の海にふさわしい。擬人化された巧みなやりとりは、神話の世界のようにおおらかである。このような遊び心のある句を読むとうれしくなる。そして俳句につ…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。