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新聞小説「常盤団地第三号棟」22日スタート 芥川賞受賞の佐藤厚志さんが抱負

 河北新報朝刊に新設される毎週日曜の「東北の文芸」面で、22日から仙台市の作家佐藤厚志さん(40)の連載小説「常盤団地第三号棟」が始まる。佐藤さんにとっては初めての書き下ろし新聞小説。初回掲載を前に、執筆の抱負を聞いた。(生活文化部・阿曽恵)

「(挿絵は)団地の雰囲気がよく伝わって、すごく好きなタッチです」と語る佐藤さん=河北新報社

狭い社会の人間模様描く

 ―どんな物語を構想していますか。

 「主人公は、集合住宅が立ち並ぶ団地に暮らす小学生の今野蓮(れん)。主に団地内での出来事や人間模様を、少年の目を通して描きます。団地というある種閉ざされた空間にはさまざまな世代、境遇の人がいて、引っ越して来たり、出て行ったりが頻繁にある。大人ではなく、かといって子ども過ぎない、小学3年生の設定にしました」

 「僕は仙台出身ですが、子どもの頃、父の転勤で北上市の団地に住んでいました。団地と関わりを持つ人は意外と多いのではないでしょうか。読者に『あるある』と思って楽しんでもらえることも書いていくつもりです」

 ―自身の体験も反映しているんですね。

 「主人公と同じく、僕も小児ぜんそくで小学2年まで特別支援学級に通いました。同級生もみんな病気や障害を抱えていて、少人数で平和に楽しく過ごせたのですが、3年生になったら通常のクラスに行かなければならない。それがすごく不安で。転校もとにかく嫌でした。小説には当時の気持ちも込めています」

日常のハラハラ取り入れたい

 ―週1回の連載をどうまとめていきますか。

 「毎回何かが起きて、一応決着する。オチまではいかなくとも、毎回の落としどころが、収まるところに収まるようにと考えています。分量が決まっている中で起承転結をちょっぴり意識して書くので、一回一回が短編小説のようでもある。なるべく読みやすく、せりふを多くしたいのですが、子どもらしい言葉遣いには苦労しています」

 「僕はずっと純文学のジャンルで書いていますけど、物語内にミステリーがないと、やっぱり面白くならない。日常生活にはたくさんのちょっとしたサスペンスがあります。待ち合わせに急いでいる途中、知らないおじいさんに道を聞かれた、遅れるかもしれない、どうしよう、みたいな。そういったハラハラを取り入れていきたいですね」

「多くの人に読んでもらえるチャンス」

 ―連載のオファーをどう受け止めましたか。

 「新聞小説って偉い先生が書くものだと思っていたので、びっくりしました。でも多くの人に読んでもらえるチャンスなので、喜んで引き受けました。実は高校時代の1年何カ月間か、新聞少年でした。自分で配達していた新聞に小説が載るのはシンプルにうれしいです」

 ―普段は仙台市内の書店で働いています。執筆のスケジュールは。

 「仕事帰り、喫茶店に寄って2時間ぐらい書きます。出勤が1時間遅い日曜祝日は、始業前にやはり喫茶店で。専業作家だったら書くための時間をたくさん確保できていいなとも思いますが、社会と接点を持つことで得るものは多い。店で単純作業をしていると結構アイデアが湧くんですよ。観察して気付いたこともまめに手帳にメモしています」

 佐藤さんの新刊「荒地の家族」(新潮社)は、19日に発表された第168回芥川賞を受賞した。

書店で商品を整理する佐藤さん=2022年12月22日、仙台市青葉区の丸善仙台アエル店

 「常盤団地第三号棟」の挿絵を担当するのは、仙台市の漫画家スズキスズヒロさん。コメントと自画像を寄せてもらった。

スズキスズヒロさん

 子どもの頃、通学路の途中に古い団地がありました。画一的に立ち並ぶ棟と棟の間を歩いていると、ふと、自分のいる位置が分からなくなって、迷路の中に迷い込んだような気分になりました。佐藤さんが描く物語がいったいどこへつながっているのか、どきどきしながら絵を描いています。

[さとう・あつし]1982年仙台市生まれ。東北学院大文学部卒。2017年「蛇沼」が新潮新人賞を受けデビュー。20年「境界の円居(まどい)」で仙台短編文学賞大賞。21年「象の皮膚」で三島由紀夫賞候補。

[すずき・すずひろ]1992年仙台市生まれ。小学3年の時「石ノ森章太郎のマンガ家入門」を読んで漫画を描き始める。2021年、初の作品集「空飛ぶくじら」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞。

連載執筆の抱負を語る佐藤厚志さん

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