東北大入学者、減る東北出身 宮城除く5県は10年で2割減 関東勢に押される

東北大に入学する東北の学生が減り続けている。この10年で2割減り、替わりに関東勢が2割強増え、立場は逆転した。大学進学者そのものが首都圏で増え、地方で減っているのが一因とみられるが、それだけだろうか。浮かび上がるのは地方の進学校の凋落(ちょうらく)。数字の変化を確認した上で、東北大教授と学習塾関係者の見方を紹介する。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)
理系の落ち込み大きく
独立行政法人大学改革支援・学位授与機構がウェブで公開する大学基本情報によると、2022年度の「出身高校の所在地県別入学者数」は東北893人に対し、関東903人。10年前の12年度は東北1103人、関東735人だった。東北と関東の差は年々縮まり、19年度以降、逆転した。
東北の落ち込みが大きいのは理系(工、理、農、薬、医、歯)で22年度は12年度と比べて23%減った。文系(文、教育、法、経済)は同11%減だった。
理系の入学者について県別に見ると、宮城は毎年250人前後でおおむね横ばい。宮城を除く5県は12年度466人から22年度303人へ163人(35%)減った。減り幅は特に秋田(59%)山形(42%)岩手(36%)の3県が大きい。

大学進学者数の減少、一因か
大学進学者数の差が広がっているのが要因の一つと考えられる。文部科学省の学校基本調査によると、22年度の大学進学者は東北5県で2万2189人(22年度)。この10年で1375人(6%)減った。宮城は9097人で、610人(7%)増えた。関東は2万2775人(13%)増え、19万8337人となった。


「未履修問題」で学校の指導負担増した|東北大・倉元直樹教授
東北大高度教養教育・学生支援機構の倉元直樹教授(教育心理学)によると、東北出身者の合格比率は2007年度の45・6%をピークに、20年度の33・7%まで減っている。ここ2年、コロナ禍に伴う地元志向の高まりからか、やや持ち直しているが、15年前から減少傾向だという。
中部出身者が8割を超える名古屋大を筆頭に、東京大、京都大、大阪大も圏域出身者が6~7割を占める。東北大は元々、高くなかった地元比率が輪をかけて下がっている。
倉元教授は「東北出身者はAO入試で5割超ながら、一般入試は3割ほど。AO入試を拡充してきたため、減少幅をとどめられてきたとも言える」と明かす。「優秀な生徒が他大学に流出しているならまだいいが、難関大に届く生徒を育て切れていないのが実態だ」と指摘する。
倉元教授は2006年に発覚した「必修科目未履修問題」がきっかけと見る。教育現場は問題以前からカリキュラムが飽和しており、学習指導要領の緩やかな運用で何とか対応してきたが、問題後は厳格に守らなければならなくなった。
「都市部と違って民間の教育リソースが乏しい地方では、学校が全てを担わなければならない。一方で少子化が進み、学校規模が縮小し、教員不足は深刻化している。かつての進学校にも今は幅広い水準の生徒が集まるようになり、学校の指導負担が増している」と現状を分析する。
受け入れ側としても危機感を抱いている。「優れた学力を持って志望する生徒なら出身地を問わないのは当然」と前置きした上で「高校野球で地元校を応援するように、東北大に特別な思いを持っている地元の生徒は大事にしたい。その基盤が弱くなるのは望ましくない」と話す。
対策の一環として、東北大は昨年6、7月、宮城を除く東北各県で進学説明会を開催した。例年3月に宮城で行ってきた取り組みを東北に初めて広げた。進路指導教諭を集め、入試の考え方について膝詰めで意見をすり合わせたという。
倉元教授は「学校単独で頑張るのではなく、県単位でチームを作り、限られたリソースの配分をどう工夫できるかが問われている。効果はこれからだが、山形など即応してくれた県もある」と語る。

[必修科目未履修問題]
2006年10月、富山県立高岡南高を発端に、全国の高校で必修科目の未履修が相次いで発覚した。地理歴史や情報などの科目で履修不足が明らかになった。同年11月下旬までの国の調査で、熊本県を除く46都道府県の663校、10万人以上で確認された。過去の年度は不問とされ、当時の3年は70時間の補習で卒業を認める「政治決着」がついた。
私立文系から旧帝大へ人気移りつつある|学習塾関係者
東北大など難関大を目指す生徒を後押しする学習塾関係者はどう見るか。
河合塾仙台校の渡辺貴吉校舎長は「首都圏勢は早い段階から受験への意識が高く、通塾率も高い。東北の学生が押され気味な印象は確かにある」と語る。
「東北大は進学説明会やオンラインでのオープンキャンパスを開催するなど、首都圏での広報活動に力を入れている。東大、京大に並ぶ『指定国立大』として、優秀な学生を全国から集めたいという考えが背景にあるのだろう」と話す。
「東北大は2次試験の配点比率が共通テストの2倍程度となっており、2次試験での逆転を狙う受験生に選ばれる。実際はともかく、他の難関大と比べて理科など一部の試験はくみしやすいと考える首都圏の受験生も一定数いるようだ」という。
岩手県内を中心に進学塾を展開する「M進」の佐々木優教育事業部統括本部長は「東北大だけではなく、北海道大や九州大といった旧帝大も同じ傾向かもしれない」と予想する。
首都圏の教育行政の方針転換を理由に挙げ「東京都教委が進学指導重点校を選ぶ基準として難関国立大に合格できる得点水準を求めているように、国立大志向が高まっている。早稲田、慶応といった私立文系から、旧帝大へ人気が移りつつある」と話す。
「東北大はAO入試に熱心で定員の3割を集めているが、近頃は一般入試よりも高い学力が問われるほど難易度が上がっている。首都圏の学生がしっかり対策している分、東北の学生は受かりにくくなっている。青森県は青森高、八戸高、弘前高と3校が踏みとどまっているが、岩手県は盛岡一高の1強に次ぐ高校がなく苦しい」と語る。

関連リンク
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みやぎ地域安全情報
宮城県警 みやぎセキュリティメールより
仙台市クマ出没情報
仙台市メール配信サービスより
- 12月4日(月)時刻不明、青葉区大倉字宮、頭数・体長ともに不明
- 12月6日(水)未明、青葉区上愛子字折葉、頭数・体長ともに不明
- 12月5日(火)午後2時50分頃、泉区住吉台東3丁目、1頭(体長不明)
- 12月6日(水)午前6時半頃、泉区西田中字萩坂前、1頭(体長70cm前後)
- 12月5日(火)午後3時45分頃、泉区住吉台東3丁目、1頭(体長不明)
- 12月4日(月)未明、青葉区芋沢字大竹原、頭数・体長ともに不明
- 12月4日(月)午後9時15分頃、青葉区荒巻字仁田谷地、1頭(体長100cm以上)
- 12月5日(火)午前7時頃、青葉区上愛子字大針、1頭(体長100cm以上)
- 12月2日(土)時刻不明、泉区福岡字欠ノ上、1頭(体長不明)
- 11月30日(木)時刻不明、太白区秋保町長袋字大原、頭数・体長ともに不明