閉じる

<記憶の素描(17)芥川賞作家・石沢麻依>青と黄色の子供

 風が柔らかく通りを吹き抜けた時、視界に淡く二つの色が翻った。4月の空を思わせる静かな青とひまわりの花びらのような黄色。その2色をまとうウクライナの国旗が、通りに面した窓やバルコニーからぶら下がり、手を振るように小さく揺れていた。それを眺めるうちに、二つの色彩は記憶の中で子供の姿をとってゆく。

 7年…

関連リンク

記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

ライブカメラ