閉じる

<記憶の素描(18)芥川賞作家・石沢麻依>旧市街の黒い痕跡

 エルベ川越しに見るドレスデンの旧市街は、黒の印象をまとっている。鮮やかな日差しを投げる空の下、石造りの建物のそこかしこに見える黒は、影とは異なる重たい色合いをしていた。ココアやきな粉のような本来の石の色にそぐわない黒。橋を渡って近づけば、そのくすみの正体が明らかとなる。ドレスデン大空襲の痕跡だった…

関連リンク