少年スポーツ言葉で伸ばす サッカー指導者2氏に聞く
サッカーのワールドカップで奮闘した日本代表や、高校野球の甲子園大会で躍進した東北勢の活躍では、選手を鼓舞するリーダーの「言葉の力」が注目された。一方、少年スポーツでは、大人の一言が子どものやる気をそいだり、パワハラになってしまうことも。宮城県内で活動する2人のサッカー指導者に、コミュニケーションのヒントを求めた。(浅井哲朗)
ここまでできているよ 努力過程を認める

コップ上向いているか 助言受け入れ促す

仙台市内でサッカースクール「ソルファクション」を主宰する中田麻衣子さん(39)。なでしこリーグの複数クラブで活躍し、今は女子への競技普及にも力を入れる。
指導の際に心がけるのは「ここまでできているよ」とささいな成功でも認める声掛け。「自ら考え、目の前の課題克服のために努力している過程をしっかり見てあげたい」と話す。
基礎的なボールを扱う技術の練習は単調になりがち。中田さんは最も楽しいゴール(得点)から逆算して子どもに考えさせる。「ボールを支配できないと点を取れないし、つらい守備もしなくてはいけない。その練習がなぜ必要か、時間をかけて理解させる」
子どものモチベーションが低い時は練習が簡単過ぎないか、逆に難し過ぎないかなど原因を見極める。「上達には子どもが楽しいと思えることが最も大事」と中田さんは強調する。
仙台、富谷両市などを拠点とする小中学生対象のクラブチーム「ACジュニオール」。内田桂太郎監督(47)は23歳でクラブを立ち上げた。誰でも受け入れるチームながらJリーグの育成チームと互角に渡り合う強豪に育てた。
「以前は自分も詰め込み型だった。技術の上達とは『慣れ』。子どもは嫌いなことには慣れないし、集中できない」と内田さん。「少しずつでも達成感が得られるよう、『夢中にさせる』ことを意識してトレーニングしている」と話す。
サッカーを通じた人間教育を重視する。「周囲のごみ一つ拾えない選手がピッチでチャンスを拾うことはできない」と選手を諭す。「コップが上に向いているか」とも問いかける。下に向けたコップに水はたまらない。助言を受け入れる心の状態を保つよう促す。
内田さんは「技術も心も成熟するには時間がかかるが、諦めずに働きかけることが大切。必ず努力の芽が開き、ぐんと伸びる時期が来る」と話す。選手から自発的な質問が出るのはその兆候。「指導者として幸せな瞬間だ」と笑う。
相手の目線、前向きに言い換え 仙台でコーチングセミナー

宮城県サッカー協会は、スポーツをする子どもを持つ親を対象に、コーチングに関するセミナーを仙台市内で開いた。講師を務めたサイタコーチングスクール(東京)の江藤真規(まき)代表の講演を紹介する。
「自分でやると決めたスポーツ。くじけず頑張ってほしい」。こんな気持ちを、どんな言葉で子どもに伝えているだろうか。「つまらないなら、やめれば?」。奮起してほしくて厳しい一言を言ってしまうかもしれないが、相手の不安をあおる「脅し」でしかない。
コーチングとは、相手の目線で考え、伝わりやすい言葉で相手の気持ちを引き出すコミュニケーションの技術。コーチは「より高く、より遠い」ゴールに「より早く」到達するための伴走者だ。
子どもの伸びる力を120%信じることが何よりも大切。使う言葉や関わり方を変えることで、子どもの主体性を育み、自立や自己肯定感の醸成にとって大きなプラスになる。
コーチングの代表的な技術に「聞くこと」がある。相づちや「それで?」などの質問を適度に入れ、たとえ賛成できない内容でも、共感する態度を見せたい。言葉に表れない隠れた気持ちまで推測することも重要だ。
「リフレーミング」も有効。追い詰める言葉を未来志向に変える。試合に負けても結果を責めず、「次はどんな工夫が必要か」などと成長への具体的なプロセスに目を向ける。
成功も失敗も大切な経験と受け止め、子どもが自発的にやる気を再生産する「内的動機付け」に結びつけるのが理想。親や指導者は、付かず離れずの距離を保ち、子どもを尊重した対話を心がけたい。

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