「セクハラ加害者と働き続けるのは普通?」 被害女性、審判後も配置換えなく
「ハラスメントの加害者と被害者が同じ職場で働き続けることは普通ですか?」。同僚からセクハラを受けたという大手運送会社の仙台市内の営業所に勤務する女性(41)が「読者とともに 特別報道室」に相談を寄せた。同じ職場にいると行為を思い出し、今も恐怖を感じるという。
「後ろから抱きつかれた」
「服の上からブラジャーのホックを外された」「後ろから抱きつかれた」「『やらせろ』などの性的な言葉を浴びせられた」。女性は2018年2月から約1年半、職場で同僚の男性からセクハラを受け、他の同僚の前で笑いものにされたという。
男性はムードメーカー的な存在で、女性は職場の雰囲気が壊れることを恐れ、強く拒否できなかった。「笑ってごまかしたが、心は泣いていた」と振り返る。
女性は契約社員で、子ども3人を1人で育てている。生活のために我慢して仕事を続けるしかなかった。
セクハラを別の同僚に相談すると、男性は間接的に女性の業務量を増やしたり「時給分働け」などときつい言葉をかけたりするようになり、女性は20年7月、会社に相談した。社員へのヒアリングで一部社員が「女性へのセクハラ行為があった」と証言したが、会社は事実と認めなかった。
精神状態が不安定で半年休養
女性は精神状態が不安定になり、体調を崩したり自傷行為に及んだりしたため半年間休養した。21年3月の職場復帰後も男性と同じ職場だったことから同9月、安全配慮義務違反などを理由に会社に損害賠償を求める労働審判を仙台地裁に申し立てた。地裁は同11月、解決金の支払いを会社に命じた。
「離すのが会社として当然だ」
だが、配置換えなどの措置は審判書に盛り込まれず、女性は今もほぼ毎日、男性と職場で顔を合わせる。「(加害者と被害者の)職場を離すのが会社として当然だと思う。(職場を同じにされ)私と同じような思いをしている人は少なくないはずだ」と言う。
会社側「対応を今後検討する」
会社は河北新報社の取材を受け、女性と面談。担当者は「男性と同じ職場にいることで精神的ストレスを抱えていることを確認した。対応を今後検討する」と話す。
宮城労働局によると、21年度の全国のセクハラに関する相談件数は7070件。雇用環境・均等室は「被害者と加害者が同じ職場にいる境遇に関する相談は非常に多い。企業と被害者の間に労働局が入り、適切な解決策を求めることができる。1人で悩まず相談してほしい」と呼びかける。連絡先は同室022(299)8844。
(池田旭)
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