女性議員の4割セクハラ被害 無視やのけ者扱いにも苦しむ 宮城・本紙アンケート

 河北新報社が宮城県内の女性地方議員に実施したアンケートでは、約4割がセクシュアルハラスメントの被害に遭っていた。性別役割意識が根強い社会で、女性議員が直面する困難や政治参画を進める意義を考えた。
(生活文化部・片山佐和子)

議会の半数超が「対策なし」

 候補者時代も含めたセクハラ被害は38%が経験。議会内や酒席、視察の宿泊先などでの事例が寄せられた(表)。
 議員や候補者へのハラスメントを巡っては、6月改正の「政治分野の男女共同参画推進法」で防止規定が新設された。所属議会のハラスメント対策を尋ねたところ、「ない」が52%と半数を占め、「ある」14%、「あるが不十分」21%、「分からない」11%だった。
 「会議の場でやゆされたり無視されたりする」「男性議員だけで行動し、女性はのけ者」。議員活動中に「女性ならでは」の困難を感じている人は多い。
 「議会内に女性や無所属の少数派議員へのハラスメントがある」。かつて女性の友人たちへ出馬を呼び掛けていた60代市議は「安心して意見が言える環境がないと女性議員は増えない」と苦言を呈する。
 70代のベテラン町議は「家庭との両立を大切にすれば議員活動ができず、犠牲にすれば周囲の評判が悪くなる。女性にだけ厳しい目が向けられる」とつづった。

飲み会の多さ負担に

 「議会後、反省会と称した飲み会が多い」(60代市議)と酒席の負担を訴える声も相次いだ。樋口典子仙台市議(62)は「酒席ではなく、オープンな議論の場で政策決定する仕組みや意識醸成が必要だ」と指摘する。
 女性議員を増やす方策として、大泉徳子名取市議(56)は「若い世代が安心して家庭生活と両立できる議会運営が必要」、嵯峨サダ子仙台市議(73)は「選挙の供託金を安くして立候補のハードルを下げる」と提案した。
 遊佐美由紀県議(58)は「日常生活の中で女性リーダーを育成する」、外崎浩子県議(61)は「各党が女性向けに地域課題などの勉強会を開く」と、政治への関心を高めることに着目する。
 女性議員が活動する意義について、浅野直子富谷市議(63)は「生活や子育ての相談が男性より多く寄せられる」、遠藤紀子利府町議(72)も「女性だから相談しやすいと言われる」と市民との距離の近さを挙げる。
 女性への暴力や児童虐待、生理の貧困など、困窮する女性から悩みを聞く機会も多い。育児や介護、地域活動の経験も生かし、課題を政策提言につなげた、との回答が多かった。

アンケート詳報

【女性議員を増やすために必要な対策(一部抜粋)】

・市町村議の報酬アップや地方議員の年金制度復活(福島かずえ県議)
・議会開会中の保育環境整備など、働きやすい環境づくり(小畑仁子県議)
・出産や育児、介護や議会活動、社会活動が両立できる環境の整備(天下みゆき県議)
・各党が責任を持ち、政治参画する女性が増えるような工夫と努力をする(大内真理県議)
・長時間拘束されるので、対策が必要(鈴木澄恵仙台市議)
・勉強会や研修会で議員になるまでの道のりを分かりやすく説明する(佐藤わか子仙台市議)
・夫婦別姓制度の導入や男女の雇用機会均等などが世界から立ち遅れており、法整備が必要(高見のり子仙台市議)
・女性議員のロールモデルの「見える化」(樋口典子仙台市議)
・男性も女性も多様な性の人も、自らの力を存分に発揮できる「ジェンダー平等」社会をつくる(嵯峨サダ子仙台市議)
・女性の視点が反映される施策の構築(佐藤和子仙台市議)
・議員活動と家庭生活が両立できる議会日程や仕組みを作る。男性の育児・介護休暇取得の推進(相沢邦戸角田市議)
・地域の考え方を変えていく。まだまだ難しいと思う(遠藤真理子登米市議)
・女性議員のための学習会や講演会などを開き、意見交換する(阿部律子女川町議)
・「政治イコール生活」だといろいろな形で伝える。政治の場で交わされる言葉を「生活の言葉」に翻訳して伝える(大内直子色麻町議)
・地方議会ではジェンダー平等の理解が進んでいないので、法律によって実効性を高める(福田淑子美里町議)
・小中高校での主権者教育をするべきだ(60代市議)
・男性の働き方改革をする(40代市議)
・政党幹部の意識改革や女性の自立が必要(70代町議)

【その他の女性議員たちの声】

◇「女性ならでは」の困難
・男性と同じ主張でも「女性」の発言として受け止められることが多い(遊佐美由紀県議)
・幼い子どもはよく病気をするが、会期中は休めない(曽我ミヨ塩釜市議)
・「女性には無理」と言われることがある(菅原麻紀栗原市議)
・一部の男性町民から罵倒されたり、怒鳴られたりした。災害時だったからかもしれないが、女性だからひどい扱いを受けたと感じた(50代町議)
・新人なので議会運営などの質問をしたら「もう少し勉強してほしい」のひと言で片付けられた(60代町議)
・コロナ禍で飲み会がなくなり、時間を書類整理などに充てられる。男性に酒をつぐのが苦痛(70代町議)
・家事は夫や子どもと役割分担しているが、共働きなので議員活動だけには集中できない。「私だからこそ理解できる町民の声がある」と自分に言い聞かせている(40代町議)
・「女性の意見は細かくてうるさい」と思われる。能力があっても要職から外される(匿名)

◇「女性ならでは」の活動
・子育て経験や高齢者向けカフェ運営など地域活動の経験を政策に生かしている(外崎浩子県議)
・わが党(自民)は女性が少ないので、さまざまな場への参加が認められる。育児や家事をしながら社会で生きる不便さを話す機会が与えられている(村岡貴子仙台市議)
・生理の貧困問題を取り上げ、生理ナプキンの無償配布や学校トイレなどへの配備につなげた(小野寺美穂名取市議)
・3人の子育て経験を生かし、支援策を提案した(鎌内つぎ子大崎市議)
・人の世話をするのが好きなので、議員活動に役立っている(田中みつ子大郷町議)
・行政への訴えや相談ができなかった女性たちが、女性で現役の母の私には相談してくれる。男性議員とも問題を共有したい(40代町議)
・気軽に住民が相談してくれて、議会の一般質問のテーマがたくさん出る(60代町議)
・男女格差やハラスメントを感じないことはほぼなく、改善のためにやるべき仕事がたくさんある(40代市議)

[メモ]回答者の平均年齢は60歳で平均当選回数は3・2回、初当選時の平均年齢は49・3歳。所属政党は自民6%、公明19%、立民11%、共産27%、無所属37%。自由記述は「実名」「世代と議会」「匿名」を選んだ上で回答してもらった。

家庭との両立支援が急務

 調査結果について、女性の政治参画に詳しい三浦まり上智大教授(現代日本政治論)に聞いた。
     ◇     ◇
 候補者の女性比率に関する政府目標は現状では実現が厳しいが、調査では「可能」と回答した人が2割と思いの外、高めに出た。男女半々を目指す共産党が27%、女性議員増に消極的な自民党が6%と所属政党の分布が影響したほか、「可能になってほしい気持ちの表れ」とも受け取れる。
 クオータ制は政党に課すため、無所属が多い市町村議会への影響は少ない。それでも「必要」は約7割。回答理由からは当事者として、切実に是正を求める姿が浮かぶ。
 立候補の障壁に関する回答が示す通り、女性議員が少ない背景には性別役割分業に基づく構造的な問題がある。誰も排除せず、政治に参画できる環境をつくるのが本来の民主主義。「政治分野の男女共同参画推進法」は6月の改正で、国や自治体に家庭との両立支援などの環境整備を義務化した。早急に進めるべきだ。
 調査では、ハラスメント被害の回答も多かった。「政治は男性のもの」という意識が強い議員は、男性領域に「侵入」した女性への制裁や報復としてハラスメントをしがちだ。
 議会には、密室での合意形成など市民感覚とかけ離れた慣行が多い。男同士なら新人議員は飲み会などで「わきまえ方」を教えてもらえるが、女性は情報を得にくい。正攻法で批判し、孤立するケースもよくある。
 「女性ならでは」の議員活動の回答からは、困窮する女性を多く支援していることが分かる。男性に相談できない女性は多い。女性議員が地域の女性たちとつながって問題を発見し、行政に支援や改善を求める重要な役割を果たしている。
 女性の地方議員増には議会改革とともに、選挙制度改革が有効だ。都道府県議会は比例代表制、市町村議会は有権者が複数の候補者に投票できる「制限連記制」を導入すると、多様な人材が選ばれるだろう。

 みうら・まり 米カリフォルニア大バークレー校博士課程修了。上智大助教授などを経て、2010年から現職。女性政治家を養成する一般社団法人パリテ・アカデミー(東京)の共同代表も務める。東京都生まれ。53歳。

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