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たのしいおうちづくりの学校 先生は職人 家造り学ぶ <廃校ルネサンス(11)旧味明小(宮城県大郷町)>

教室内にある屋根に登り、瓦にくぎを打って固定する体験ができる。職人が先生となって指導する

 瓦屋根はどうやってふくの? 壁をきれいに塗るこつは? 宮城県大郷町の「たのしいおうちづくりの学校」では、家造りに関するさまざまな作業を楽しみながら体験できる。職人たちが先生となり、子どもたちから職人志望者まで、基礎的な技術を丁寧に教えている。

 住宅建設業のスモリ工業(仙台市宮城野区)が2016年に開校した。12年3月に閉校した旧味明(みあけ)小校舎を活用。鉄筋コンクリート3階の建物のうち、2階の6教室を使い、「屋根」「外壁」「サッシ(窓)」「換気」など6分野の技術を伝える。

 屋根のふき方を学ぶ教室には、部屋いっぱいに屋根を模した勾配が取り付けられている。来場した親子連れが瓦を抱えて上り、しゃがみ込んでくぎを打ち、瓦を留める。瓦を持ったまま屋根の上を移動するのは、大人でも苦戦する。

 別の教室では外壁の塗り方を学べる。キャスター付きの壁に塗料をのせ、こてでならした後、凹凸のあるローラーで花のような模様を付ける。仕上げに、平らなローラーで不必要にとがった部分などを軽くつぶす力加減が難しい。

 れんがのタイル張りや壁塗りを体験した大崎市古川西小中3年大友孝真(こうま)君(8)は「段ボールの工作が好き。うまく塗れてうれしかった」と笑顔を見せた。会社員の父孝博さん(48)は「家ではできない経験ができた。孝真が去年まで通っていた西古川小が廃校になったこともあり、校舎の活用法として興味深い」と話す。

 指導した男性職人(45)は「現場は屋外で、壁は何倍も大きい。塗ったそばから乾いていくので、スピード勝負だ」と語る。

2階から3階にかけての吹き抜けに設置された建物のモデル。玄関から入り、中にある階段で上階との間を移動できる

 建築現場では大工や左官など、家造りに関わる職人の不足が深刻化している。仕事がきつく、収入も不安定というイメージや、工業化が進んで職人の出番が減り、目指す若者が減っているためという。男社会の印象が強く、女性の職人は特に少ない。

 須森明社長(73)は「施設を通じて、学ぶ楽しさ、働く人への感謝の気持ちを育てたい。家造りに興味を持つきっかけになれば」と願う。おうちづくりの学校で、職人志望者が一定期間通って技術を身に付ける講座を開設することも検討している。

 施設には開校以来、1000人以上が訪れた。特に幼い子どもを連れた家族が目立ち、週末には建物内に元気な声が響き渡る。須森社長は「校舎は誰もが親しみを感じる場所。特に子どもに楽しんでもらうことができているのがいい」と目を細めた。
(文・高橋杜子、写真・上村千春)

 味明小は1955年開校。町内の大谷、大松沢、粕川の各小とともに、大郷小に統合された。おうちづくりの学校は無料で利用でき、土日祝日の午前10時~午後3時に開校。1階はキッズルーム、3階は家に関するパネルなどを展示する。平日は要予約。連絡先は(0120)007027。

たのしいおうちづくりの学校 先生は職人 家造り学ぶ <廃校ルネサンス(11)旧味明小(宮城県大郷町)>

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