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「安くておいしい」を貫く 紀文寿司<ディープ定禅寺>

常連客と談笑する店主の黒田さん夫妻

 扉を開けて、のれんをくぐれば、「紀文寿司(ずし)」の親方の黒田寿弘さん(77)、二三子さん(70)夫妻=仙台市青葉区=がカウンター越しに出迎えてくれる。席は六つだけ。大きな窓から定禅寺通のケヤキ並木を見渡せるのが売りだ。

 お品書きはおつまみ、にぎりずし、デザートの「おまかせ」のみ。今月上旬に訪れた時は、ホヤ酢などのおつまみ6品、ホウボウなどのにぎり9貫、デザートが順に出されていた。

 ネタは近くの鮮魚店に足を運び、黒田さんの目利きで選ぶ。料理の種類は日によって異なるが、デザートの前に出すアナゴのにぎりは欠かさない。石巻産の脂が乗ったアナゴを骨が軟らかくなるまで煮る。崩れやすいので、客の手に直接のせるのが名物だ。

 塩釜市から仙台・国分町を経て2010年、今の場所に店を構えた。「落ち着いた雰囲気で、芽吹き始めたケヤキがとてもきれいだった」と振り返る。国分町時代に1度、店を閉めたが、常連客の要望もあり、定禅寺通で営業を続ける。

 黒田さんは若い頃、がむしゃらに働いた。その余波か、50歳で心臓を患った。これからの人生で悔いを残したくないと、二三子さんと旅行に出向くなど余暇にも気を配るようになった。

 年齢を重ねるにつれ、2人で切り盛りできるように店の規模を縮小してきた。今は4、5人までの接客で肩肘張らない営業をしているが、「鮮度が良く、安くて、おいしい」の方針は変わらず貫く。

 店から定禅寺通の街並みを見続けてきた。新しい店も増え、以前は少なかった若者の姿も見られるようになった。

 「うれしいけど、長く続けている店にも目を向けてほしい」とぽつり。それでも「自分たちのペースで、できる限り店を続けたい」と、夫妻とも最後は笑顔を見せた。(報道部・中村楓)

石巻産アナゴのにぎり
タイのだし煮
ウニどんぶり
毛ガニの甲羅寿司

[紀文寿司]青葉区立町26の19井上ビル2階。午後6時~。完全予約制。水木日曜・祝日定休。メニューは「おまかせ」7000円。連絡先は070(6624)0852。

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