(688)いなびかり鏡に近く眉をひく/椎名果歩(1977年~)
真剣に化粧をしている女性。鋭く引かれる眉の線と、稲光のひやりとする感触が重なる。女性がメークをするのは、身だしなみを整えるためだろうが、この句からは自身にスイッチを入れる儀式のように思えてくる。ところで稲光は稲妻のことで、もとは「稲の夫(つま)」の意。古代ではこれを受けて稲が穂をはらむと信じられて…
関連リンク
- ・(687)小鳥来て巨岩に一粒のことば/金子兜太(1919~2018年)
- ・(686)重陽の夕焼に逢ふ幾たりか/阿部みどり女(1886~1980年)
- ・(685)蜩(ひぐらし)を思へばつくつく法師鳴く/小檜山繁子(1931年~)
- ・(684)秋風やおそろしきほど人並び/石田郷子(1958年~)
- ・(683)人問(とわ)ば露と答へよ合點(がってん)か/小林一茶(1763~1828年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。