聞こえない親に育てられた子どもの思いに感慨 石巻で上映会 監督トークも
聞こえない親に育てられた聞こえる子ども「コーダ(CODA:Children Of Deaf Adults)」を追ったドキュメンタリー映画「私だけ聴こえる」の上映会が、石巻市中央1丁目のシアターキネマティカであった。3回公演で計66人が鑑賞し、健聴者からは「障害者の子」として、ろう者からは「耳が聞こえるから」と部外者扱いされるコーダの思いに触れた。
上映会は同作の松井至監督と交流がある石巻アートプロジェクト実行委員会(志村春海代表)が主催した。各回とも松井監督が登壇し、観客は監督に質問したり映画の感想を述べたりした。手話通訳者が付いた回では、会場の会話を手話で同時通訳した。
自身もろう者で市内の学校で教員を務める羽生薫さん(40)は「非常に感銘を受けた。なんと言えばいいか考えがまとまらないが、コーダの経験は私の経験と似ていると思った」と述べた。
映画は自分の経験を共感し合える他者に出会えないコーダの苦痛や、健聴者とろう者の間で揺れ動くアイデンティティーを見つめた。ろう者の東日本大震災での被災体験を取材する中でコーダの存在を知り、制作に至った。作中には震災当時、市内に住んでいたろう者が震災体験を語る場面が登場する。
松井監督は「自分が何者なのか、同じ境遇の人がいると知ることが大きなエンパワーメントになる。『あなたは一人じゃない』と伝えたい」と話した。
映画は動画配信サービス「アマゾンプライムビデオ」などで配信している。
上映会は国連が定める「手話言語の国際デー」である9月23日にあった。
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