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達人、辰人2024 (2) ナス漬け 自営業・近藤よし子さん

夏・秋限定、自慢の味

スタッフと漬物の仕込みをする近藤さん(右)

 自家栽培のナスを使った手作りの漬物で、顧客の心と胃袋をつかむ。

 東松島市赤井の近藤よし子さん(75)は自宅敷地内に工房を構え、近隣の産直施設3カ所で漬物などを販売している。ラインアップは約20種類あり、中でも夏と秋限定のナス漬けが人気商品だ。石巻市恵み野6丁目の「グリーンサムいちば」ではナス漬け目当てに開店前から30人ほどが並ぶ日もあり、1人5袋までと購入制限を設けるほど。「味がいい」「柔らかい」と評判で、多い日には300袋を用意するものの昼前には売り切れる。

 近藤さんは「お客さんに喜んでもらえるのが何よりうれしい」と目尻を下げる。

 最盛期は早朝3時過ぎから納品の準備作業を始め、野菜の収穫や調理、配達などを担う7人のパートスタッフらとフル回転する。おいしさの秘訣(ひけつ)は「愛情と手間をかけること」と近藤さん。回転式の機械にナスと塩、砂糖といった調味料を入れ、じっくりもむのが柔らかく仕上げるポイント。たるで一晩漬けたら完成だ。何度も試行錯誤してたどり着いた調味料の配合は「企業秘密だから教えられない」と笑う。

 漬物を産直施設に出荷するようになったのは約20年前。夫の勝郎さん(79)が定年退職を機に自宅の畑で野菜の栽培を始めたのがきっかけだった。もともと料理好きで、子育てをしながら病院給食や弁当店の調理員として長年働いた。

 漬物の納品を産直施設の開店に間に合わせるため早朝から忙しく働くが「待っているお客さんがいると思うと力がわく。スタッフやお客さんのおかげで好きなことを続けられている」と充実感をにじませる。

 いしのまき農協の産直施設「やもと四季菜館」(東松島市大塩)に商品を届け、居合わせた生産者仲間たちとお茶を飲み笑い合うひとときが至福だ。中には90歳近い先輩もいて、刺激をもらう。

 「体が動く限りは、おいしいと言われるものを作り続けていきたい」。今年も6月ごろ、自慢のナス漬けが店頭に並ぶ。
(奥山優紀)

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