(816)はからずも粕汁に酔ふ夜の獄/かりんとう(生年不詳)
いわゆる房の中では、当然ながら飲酒も喫煙もできない(違法な工夫を凝らす受刑者もひょっとするといるのかもしれないが)。特殊な生活が続いたからか、お酒は好きだったはずなのに、粕(かす)汁の匂いだけで酔ってしまったよ。いや、せめて気持ちだけでも酔いたいという願いの裏返しと読むと、「夜」の空気感が一層迫っ…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。