こどもの日 大空に羽ばたくあなたへ 社説(5/5)
きょうは「こどもの日」。子どもの皆(みな)さんを大切に思い、幸せを願う日に河北新報(かほくしんぽう)をつくる私(わたし)たちからメッセージを送ります。
もうすぐ大型連休(おおがたれんきゅう)が終わり、いつもの毎日に戻(もど)ります。何となく不安な人もいるでしょう。そんな時に、お薦(すす)めしたい一冊(さつ)があります。田島征三(たしませいぞう)さん作の絵本「とべバッタ」。カマキリやヘビなどに食べられないように、茂(しげ)みにひそむバッタのお話です。
ある日、バッタはおびえて生きるのが嫌(いや)になり、大きな石のてっぺんに上ります。天敵(てんてき)たちに見つかると、死にものぐるいでジャンプ! 生まれて初めて羽を広げ、自分の力でどこまでも飛んでいきます。
あなたにも大空へ羽ばたく力がある。友だちと遊ぶ。本を読む。スポーツを楽しむ。ぼんやり空想する。子ども時代は、それぞれのやり方で心と体にパワーをため、飛び立つ準備(じゅんび)をする期間です。
急ぐ必要はありません。「そろそろ大丈夫(だいじょうぶ)かな」と思える日まで寄(よ)りそい、励(はげ)まし、支(ささ)えるために私たち大人(おとな)がいるのです。
日本では「こども基本法(きほんほう)」が昨年4月、スタートしました。世界の国々が参加する「子どもの権利条約(けんりじょうやく)」に沿(そ)い、全ての子どもを大事に育てるために必要な考え方を定めています。例えば、子どもは大人に従(したが)うだけの存在(そんざい)ではなく、一人(ひとり)の人間として大切にされ、意見を言う権利を持つことなどです。
社会にはいじめや不登校、虐待(ぎゃくたい)、貧困(ひんこん)などに苦しむ子どもがたくさんいます。誰(だれ)もが幸せに暮(く)らせる社会にしようと、国と都道府県や市町村などの自治体は大人だけで物事を決(き)めず、子どもの意見を丁寧(ていねい)に聴(き)くことになりました。
自分の考えを話した時に「子どものくせに生意気だ」などと言う大人がいたら、ぜひ基本法のことを教えてあげてください。
一人で悩(なや)む子どもを減(へ)らすために、家族や学校の先生、スクールカウンセラーなどのほか、交流サイト(SNS)や電話で相談できる窓口(まどぐち)もあります。
中には「誰にも言えない」「周りの大人を信じられない」と考える人や「相談してもあまり変わらない」と思う人もいるでしょう。困(こま)っている子どもの話をじっくり聞き、解決(かいけつ)を手伝(てつだ)う大人をもっと増(ふ)やさなければいけません。
基本法ができたからといって、いろんな問題がすぐになくなるわけではありません。この東北にも「子どもたちを笑顔(えがお)にしよう」「悲しい思いをする子どもをなくしたい」と活動する人々がいます。姿(すがた)は見えないかもしれないけど、たくさんの大人があなたを応援(おうえん)しています。
ワクワクする未来をつくるために、皆さんはどんなアイデアがありますか。私たちも一生懸命頑張(いっしょうけんめいがんば)るので、どうぞ一緒(いっしょ)に考えてください。
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